東京都におけるOidium 属Reticuloidium 亜属菌によるキュウリうどんこ病の発生実態


[要約]
Oidium 属Reticuloidium 亜属菌(OR菌)によるキュウリうどんこ病は、東京都の広い範囲で防除が必要な程度にまで発生している。本菌の発生盛期は5月〜6月中旬で、葉位によっては6月下旬まで蔓延する。7月以降は従来のFebroidium 亜属菌が優占する。

[キーワード]果菜、糸状菌、発生生態、キュウリ、うどんこ病

[担当]東京農総研・安全環境科病害虫管理チーム
[代表連絡先]電話:042-528-0520
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  2002年、神奈川県において、2003年および2004年には富山県の広範な地域で従来のOidium 属Febroidium 亜属菌(以下OF菌)とは異なるOidium 属Reticuloidium 亜属菌(同OR菌)によるキュウリうどんこ病の発生が報告された。距離的に離れた地域においてOR菌による同病の発生が相次いで報告されたことから、本亜属菌の広範な分布が推定される。そこで、東京都におけるOR菌の発生状況、菌種の推移と被害程度について明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. OR菌によるうどんこ病の発生は東京都5市2町のキュウリ調査圃場16地点中13地点と広範囲に確認されている。発生品種は、アンコール10、京涼み、トキワ地這、夏すずみ、南極2号、湧泉の6品種である。
2. 生産圃場において、5月下旬まではOR菌が優占する。しかし、6月下旬では、圃場により優占する菌種が異なり、7月以降は従来のOF菌のみが観察される(表1)。
3. 菌種と発病の推移は葉位によって異なる。
4. 概ね10節以下の葉ではOR菌が優占した状況で急速に発生が拡大し、従来のOF菌と同程度の被害を生じる。その後OR菌率は暫時低下するが、6月下旬までOR菌の比率が高い状態が継続する。これに対して、10節以上の中〜上位の葉では、発生後すぐにOR菌率が低下し、以降従来のOF菌が優占する(図1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 東京都においてOidium 属Reticuloidium 亜属うどんこ病菌が広範に分布している。
2. 発生時期が従来の菌より早く、今後うどんこ病の要防除期間が拡大する可能性がある。
3. 時期により優占する菌種が異なるため、各菌種の諸性質を考慮した防除を行う必要がある。
4. 調査圃場におけるOR菌によるうどんこ病の発生程度は発病葉率約20〜40%、発病度約6〜13であり,薬剤防除を必要とする。


[具体的データ]

表1 OR 菌発生圃場における菌種の時期的推移
図1 キュウリの葉位における菌種と発病の推移

[その他]
研究課題名:新発生・異常発生病害虫の原因究明と対策
予算区分:都単
研究期間:2003〜2007年度
研究担当者:星 秀男、佐藤幸生、堀江博道、竹内 純
発表論文等:1)星ら (2006) 日植病報72(1) :79
                  2)星ら (2007) 日植病報73(1) :41-42

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