DMI剤耐性キュウリうどんこ病菌の遺伝子診断法


[要約]
DMI剤耐性キュウリうどんこ病菌のCYP51 遺伝子(ステロール脱メチル化酵素遺伝子)には特異的な塩基置換変異があり、この変異を利用して設計したプライマーを用いれば、高度耐性菌をPCR法により検出できる。

[キーワード]キュウリうどんこ病、DMI剤耐性菌、遺伝子診断法、CYP51 遺伝子

[担当]神奈川農技セ・野菜作物研究部、農業環境研究部
[代表連絡先]電話:0463-58-0333
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]研究・普及

[背景・ねらい]
  近年、キュウリ栽培においてDMI薬剤耐性のうどんこ病菌が出現し、防除効果が低下している。有効な防除を行うため、耐性菌発生状況を把握する必要があるが、絶対寄生菌であるため、薬剤耐性試験は繁雑で時間を要する。そこで、DMI剤の標的酵素であるCYP51遺伝子の薬剤耐性程度による塩基配列の違いを基にPCR法によるDMI剤耐性菌の簡易診断技術を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. DMI剤耐性菌のうち、高度耐性菌にはCYP51遺伝子に4箇所の塩基変異が存在する(表1)。
2. 防除の実用場面で問題となるのは、生物検定においてトリフルミゾールに対するRf値が500以上となる4塩基置換変異菌である(表1)。
3. 4箇所の塩基変異を基に設計したプライマーセット(耐性菌検出用のR1F:AAGTTCTTCGCCTCCACTGCとR2R:CAGCGATGTCTCCCTGCGATAのセット、感受性菌検出用のS2F:TCTTCGCCTCCACGGCCCAATとS2R:CAGCGATGTCTCCCTGCGTCAのセット、増幅産物は350bp)を用れば、高度耐性菌とそれ以外の菌をそれぞれ特異的に検出できる。
4. 単一病斑を含む直径5mmのリーフディスクからCTAB法により抽出した全DNAを用いて検定ができる(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. PCRの条件は、プライマーR1F-R2Rのセットでは、熱変性95℃4分、熱変性95℃30秒→アニーリング65℃30秒→伸長72℃30秒を35サイクル。プライマーS2F-S2Rのセットでは、熱変性95℃4分、熱変性95℃30秒→アニーリング67℃30秒→伸長72℃30秒を35サイクル、とする。
2. 本法は4箇所の塩基置換変異菌のみ検出可能であり、感受性型と1箇所の塩基置換変異型の菌は区別できない。
3. 同じ圃場で4塩基置換変異菌と1塩基置換変異菌が混在して存在するので、複数の検体を用いて圃場の耐性菌発生状況を検定する(表3)。
4. CYP51 遺伝子に塩基置換変異のない耐性菌(上流域に挿入配列がある等)は低率で存在するが、いずれもトリフルミゾールに対するRf値は500より低い。


[具体的データ]

表1 キュウリうどんこ病分離株におけるCYP51 遺伝子のアミノ酸置換とDMI剤感受性との関係
表2 DMI剤感受性が異なる菌株に対する各種農薬の防除価a)
表3 神奈川県で採集したキュウリうどんこ病菌CYP51 遺伝子の塩基型の解析と遺伝子診断による検出

[その他]
研究課題名:遺伝子診断法により殺菌剤耐性菌簡易検出技術の開発
予算区分:競争的資金(高度化事業)、県単
研究期間:2004〜2006年度(高度化)、2007年度(県単)
研究担当者:植草秀敏、折原紀子、野村研、久保深雪、北宜裕、武田敏幸(全農)
発表論文等:久保ら(2007)植物防疫 61(8):413-420

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