バイオフォトンを指標とした「植物免疫」安定化候補資材の検索方法


[要約]
植物が発するバイオフォトンの強度を指標にした迅速・簡便な検索方法は、アブシジン酸(ABA)のシグナリング阻害が検出できるため、植物免疫安定化候補資材の選抜に利用できる。

[キーワード]バイオフォトン、植物免疫安定化資材、アブシジン酸、塩ストレス、イネ

[担当]静岡農林研・栽培技術部
[代表連絡先]電話:0538-35-7211
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
  病害抵抗反応を抑制し植物を罹病しやすくさせるアブシジン酸(ABA)の作用を阻害し、抵抗反応を安定化する物質を植物免疫安定化資材と呼ぶ。環境ストレスを受けている植物はABAが生成するために、罹病しやすくなるが、この環境要因による農作物の罹病化は大きな生産阻害要因となっており、植物免疫安定化資材の開発が求められている。
  現在、植物免疫安定化資材の迅速・簡易・安価な評価方法がなく、この資材の開発阻害要因となっているため、迅速・簡便性に優れる生体情報であるバイオフォトンを指標とした検索方法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. ABAは病害抵抗反応にリンクしたバイオフォトンを強く抑制する。図1に示すとおり、100μM ABAを5日間前処理したイネ培養細胞は、病害抵抗反応のシグナル伝達物質であるジャスモン酸(JA)とサリチル酸(SA)が誘導するバイオフォトンや病害抵抗性誘導剤であるアシベンゾラル-S-メチル(ASM)が誘導するバイオフォトンを抑制している。植物免疫安定化資材はABAシグナリングの阻害物質(ABA合成阻害剤とABAシグナル伝達阻害剤)で、その作用によりこの抑制は回復するため、この現象を利用して植物免疫安定化候補資材を評価できる(図2)。
2. 植物免疫安定化候補資材の評価は、塩ストレス処理により細胞内に生成誘導したABAを利用して行う。イネ培養細胞1gと培養液2mlをシャーレに秤量し、これに被検物質を処理する。さらに、150mM塩化ナトリウムを処理してABAを3時間生成誘導し、その後、病害抵抗反応誘導物質(JAまたはASM)を処理する。被検物質がJAやASM誘導性バイオフォトンを回復させれば、ABAシグナリングの阻害活性を持つ可能性が高いと判定する。ABAシグナル伝達阻害剤の評価は、100μM ABAをイネ培養細胞に直接処理することによっても行える。この時、病害抵抗反応誘導物質としてJA、SAまたはASMが使用できる。
3. ABAの生合成阻害剤であるアバミンは本検索方法により植物免疫安定化資材と評価できる(図3)。
4. 本検索方法は、培養細胞、シャーレ、病害抵抗反応誘導物質及びABAまたは塩化ナトリウムを必要とするだけで、ランニングコストは安価で、かつ、測定方法も簡便である。また、評価は数時間で終了し、迅速性も備えている。

[成果の活用面・留意点]
1. 塩ストレス誘導のABAを利用する場合は、再現性が悪いため、SAは使用しない。
2. 病害抵抗性誘導物質が誘導するバイオフォトンを適切に発生させるため、液体振とう培養により、対数増殖期の後期に達した培養細胞を評価に使用する。
3. 培養細胞は無菌状態で扱い、温度と水分ストレスもできるだけ与えないようにする。
4. ABAはSAとJA経路の病害抵抗反応を共に抑制することが知られているが、SAとJAが誘導するバイオフォトンも同様に抑制する。


[具体的データ]

図1 ABA処理によるJA、SA誘導性バイオフォトンの抑制
図2 バイオフォトンを指標にした植物免疫安定化候補資材の評価原理
図3 塩ストレス処理によるJA、ASM誘導性バイオフォトンの抑制とアバミンによる回復

[その他]
研究課題名:バイオフォトンの発生メカニズムの解明とその利用技術の開発
予算区分:研究高度化事業
研究期間:2006〜2010年度
研究担当者:加藤公彦、貫井秀樹、伊代住浩幸、仲下英雄(理研)、浅見忠男(理研)
発表論文等:加藤ら(2007)「植物免疫安定化資材の評価方法及びキット」特許出願2007-309394

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