強酸性電解水を利用したイネシンガレセンチュウの検出法


[要約]
イネシンガレセンチュウの検出には、水道水と比較して線虫分離数が向上する希釈した強酸性電解水の媒体としての利用が有効である。

[キーワード]イネシンガレセンチュウ、検出、線虫、イネ籾、強酸性電解水

[担当]愛知農総試・環境基盤研究部・病害虫グループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(虫害)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
  強酸性電解水処理によるイネシンガレセンチュウ防除の可能性について検討した結果、防除効果は認められなかった。しかし、強酸性電解水に浸漬した籾は水道水に浸漬した籾に比較してイネシンガレセンチュウの分離数が多くなることが分かった。一方、イネシンガレセンチュウの汚染度を診断するためには、供試稲籾内線虫密度を正確に把握する必要がある。そこで、効率的なイネシンガレセンチュウの汚染診断法を開発するために、本研究では強酸性電解水を媒体として用いた検出法を示す。

[成果の内容・特徴]
1. イネシンガレセンチュウの分離法はHoshino and Togashi (2002)に準拠するが、酸による腐食を防ぐために籾受け部は塩ビパイプの底面にポリエステル布を張り付けた容器を用いる。300mlのビーカーに200mlの20%強酸性電解水(原液を水道水で希釈、希釈後の有効塩素濃度は約10ppm、pHは3.5)を注ぎ、縦に切断した籾50粒を容器に入れ、水中に固定する(図1)。静置後、ビーカー内の液を20μmの篩でろ過、濃縮して検鏡する。
2. 20%強酸性電解水を用いた場合は液の濁りが少なく、顕微鏡下で線虫を確認しやすくなる。
3. 乾燥および25℃の水道水に24時間浸漬したイネシンガレセンチュウ汚染籾では、水道水より20%強酸性電解水で検出される線虫数が有意に多い(表1)。
4. 乾燥状態で保管したイネシンガレセンチュウ汚染籾を水道水で処理(処理1)後、再び水道水あるいは20%強酸性電解水で処理(処理2)すると、20%強酸性電解水で検出される線虫数が有意に多い。また、全検出線虫数(処理1+処理2)に対する処理2で検出される線虫数の割合は、20%強酸性電解水の方が有意に高い(表2)。
5. イネシンガレセンチュウを検出するために20%強酸性電解水を用いると、水道水を用いた場合と比較して検出線虫数が向上するため、分離装置を小型化できる。

[成果の活用面・留意点]
1. 強酸性電解水はベルマン法など他のイネシンガレセンチュウ分離法にも利用可能と思われる。
2. 強酸性電解水の濃度が高いとセンチュウがダメージを受け、検出数が低くなる。
3. 強酸性電解水の製造装置によって有効塩素濃度とpHが若干異なるので、調整が必要である。


[具体的データ]

図1 塩ビ管とポリエステル布を用いた線虫分離法
表1 乾燥籾と24時間水浸漬籾における水道水と20%強酸性電解水による検出線虫数
表2 乾燥籾を水道水処理後、水道水および20%強酸性電解水により再処理した場合の検出線虫数

[その他]
研究課題名:農作物病害虫発生予察事業
予算区分:国補
研究期間:2007年度
研究担当者:西本浩之、坂井三千治

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