晩生、多収、極良食味で高温登熟性が高い水稲新品種候補「越南208号」


[要約]
「越南208号」は寒冷地南部では晩生の早に属し、多収、極良食味で、「コシヒカリ」より高温登熟性が高く玄米品質が優れる。

[キーワード]イネ、晩生、多収、極良食味、高品質、高温登熟性

[担当]福井農試・作物・育種部・育種研究グル−プ
[代表連絡先]電話:0776-54-5100
[区分]作物、関東東海北陸農業・北陸・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  全国的に「コシヒカリ」への作付け集中が問題視される中、危険分散、作業分散の点から「コシヒカリ」とは熟期が異なる極良食味品種が求められている。また、近年の高温化傾向に伴い、登熟期間が高温で推移しても、玄米品質が劣化しないことが重要な育種目標になっている。
  そこで、「コシヒカリ」より晩生で、高温登熟性に優れた品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 「越南208号」は、1997年に中晩生で良質の「北陸159号」(後の「あわみのり」)を母とし、中生、短稈、多収の「越南173号」を父として福井県農業試験場で人工交配を行った組合せ後代から育成された粳系統である。
2. 「コシヒカリ」より出穂期で5日、成熟期で7日遅く、育成地では“晩生の早”に属する(表1)。
3. 稈長は「コシヒカリ」より20cm低い。穂長は「コシヒカリ」より短く、穂数は多く、草型は“偏穂数型”である。耐倒伏性は“強”である(表1)。
4. 収量性は「コシヒカリ」に比べ7%高い。(表1)。
5. いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pia,i  ”と推定され、いもち病抵抗性は葉いもちは“やや弱”、穂いもちは“中”である。白葉枯病抵抗性は“弱”、縞葉枯病に対しては“罹病性”、穂発芽性は“やや難”、障害型耐冷性は“中”である(表1)。
6. 玄米千粒重は「コシヒカリ」と同等で、外観品質は「コシヒカリ」より優れる。特に高温登熟下でも外観品質の劣化が少ない(表1図1)。
7. 精米白度が高く、食味は「コシヒカリ」と同等で極良食味である。

[成果の活用面・留意点]
1. 適応地域は北陸、関東以西の地域である。
2. 福井県で奨励品種に採用予定。
3. 白葉枯病に弱いので、常発地での栽培は避ける。


[具体的データ]

表1 特性一覧表
図1 高温登熟下での良質粒率

[その他]
研究課題名:寒冷地南部向け極良食味、高品質および多収品種の育成
予算区分:指定試験
研究期間:1997〜2007年度
研究担当者:冨田桂、田野井真、小林麻子、林猛、寺田和弘、神田謹爾、田中勲、見延敏幸、
                  堀内久満、杉本明夫、鹿子嶋力、堀内謙一

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