第2染色体長腕に座乗する炊飯米の「粘り」に関するQTLの効果


[要約]
炊飯米の「粘り」に関するQTLが第2染色体長腕領域に存在する。同領域のKA68およびKA80は、「粘り」の選抜に利用できるDNAマーカー候補である。

[キーワード]イネ、食味、粘り、QTL、第2染色体

[担当]福井農試・作物・育種部・育種研究グル−プ
[代表連絡先]電話:0776-54-5100
[区分]作物、関東東海北陸農業・北陸・水田作畑作
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
  水稲品種「コシヒカリ」は、その食味の良さが市場に広く受け入れられている。これまでの研究で「コシヒカリ」の特徴である炊飯米の強い「粘り」に関するQTLを第2染色体長腕に検出した。良食味系統を効率的に選抜するために、炊飯米の「粘り」に関するQTLを特定し、選抜に利用できるDNAマーカーを開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 「粘り」が弱く食味の劣る「アキヒカリ」に、「コシヒカリ」の「粘り」に関する第2染色体のQTLを導入した系統のうち、系統3、4、5および6の「粘り」は、「アキヒカリ」より有意に強い(表1)。
2. 「粘り」が強い系統3、4、5および6の白米のアミロース含有率は、「アキヒカリ」より有意に少なく(表1)、アミロース含有率の低下により「粘り」が増加する。
3. 炊飯米の「粘り」に関するQTLが、RM13658からRM3730にかけての領域とKA43からRM6933にかけての領域の、いずれか、もしくは両方に存在する(図1)。
4. SSRマーカーKA68およびKA80は、炊飯米の「粘り」の選抜に利用できるDNAマーカー候補である(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本研究で特定した領域のみでは、「コシヒカリ」並みの「粘り」には達しない。
2. KA68またはKA80を選抜に利用する場合は、当該集団の親品種の遺伝子型を確認の上、使用する。
3. 本研究で特定した領域に座乗する「粘り」を制御する遺伝子については不明である。


[具体的データ]

表1 QTL導入系統および比較品種の炊飯米の「粘り」評価値および白米のアミロース含有率
図1 QTL導入系統および比較品種の第2染色体長腕領域の遺伝子型および形質評価
表2 候補DNAマーカーのプライマー配列と第2染色体上の物理的位置

[その他]
研究課題名:イネの食味関連形質に関するDNAマーカー選抜技術の開発
予算区分:委託プロ(DNAマーカー)
研究期間:2004〜2007年度
研究担当者:小林麻子・冨田桂

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