地力を考慮した遅植コシヒカリの全量基肥施肥法


[要約]
コシヒカリの5月中旬移植での全量基肥施肥を行うには、高地力圃場では、速効性窒素を施用せず、基肥時に遅効性窒素のみを4kgN/10a程度施用する。低地力圃場では、慣行の全量基肥肥料を6〜7kgN/10aの範囲で使用する。

[キーワード]コシヒカリ、遅植、地力窒素、全量基肥施肥、速効性窒素、遅効性窒素

[担当]福井農試・生産環境部・土壌環境研究グループ
[代表連絡先]電話:0776-54-5100
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  本県では登熟期の高温による乳白米等の障害を回避するため、移植時期を慣行の4月下旬〜5月上旬から、5月中旬以降に遅らせるよう推奨しているが、圃場により倒伏や減収が見うけられる。一方、全量基肥施肥法が普及している中で、遅植に応じた当該技術の確立を求める声も大きい。このことから、地力程度別に地力窒素発現パターンとコシヒカリの施肥窒素に対する反応を調査し、遅植での全量基肥施肥を行うための参考とする。

[成果の内容・特徴]
1. 5月中旬移植の地力窒素発現パターンは5月上旬移植と比べ、高地力圃場(成熟期の地力窒素発現量が13mg/100g程度)では幼穂形成期頃の地力窒素発現量が多く、倒伏の危険性が高まる。一方、低地力圃場(成熟期の地力窒素発現量が7mg/100g程度)の場合、成熟期に至までの発現量が多くなる傾向にあるが、高地力圃場と比較すればその程度は大きくない(図1)。
2. いずれの圃場でも、出穂期から成熟期までの期間窒素発現量は5月中旬移植が5月上旬移植より少なく穂肥の施用は不可欠である(図1)。
3. 高地力圃場で5月中旬移植を行う場合、慣行の施肥窒素配分と量(10a当たり基肥3kg−穂肥①2kg−穂肥②2kg、慣行用全量基肥肥料(速効性窒素40%、遅効性窒素(LPSS100)60%)の7kg施用に相当)は不適であり、穂肥相当の遅効性窒素(LPSS100)のみを基肥時に4kg/10a程度施用することで、倒伏を軽減し、収量を55kg/a程度確保できる(表1図2)。
4. 低地力圃場で5月中旬移植を行う場合、肥料は慣行用全量基肥肥料(速効性窒素40%、遅効性窒素(LPSS100)60%)を用いればよい。施肥窒素量も慣行移植と同等な6〜7kg/10aとすることで、倒伏は少なく、50kg/a程度の収量が確保できる(表2図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本施肥法は5月15日頃の移植で適用する。
2. 高地力圃場の全量基肥施肥では、リン酸、カリは別途施用する。
3. 高地力圃場と低地力圃場に該当しない圃場では、速効性窒素と遅効性窒素の配合割合および遅効性窒素の種類、施肥窒素量を別途検討する必要がある。


[具体的データ]

図1 地力程度と移植期を異にした場合の地力窒素発現パターン
表1 高地力圃場において異なる施肥条件で栽培を行ったコシヒカリの収量・品質(試験圃場:グライ土)
表2 低地力圃場において全量基肥施肥を行ったコシヒカリの収量品質(試験圃場:灰色低地土)
図2 5月中旬移植(5月15日頃)での地力程度別窒素供給パターン

[その他]
研究課題名:コシヒカリの作期拡大に応じた全量基肥施肥技術の確立
予算区分:国補
研究期間:2005〜2007年度
研究担当者:野上雅弘

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