台湾における果実の購買・消費行動と日本産果実に対する消費者評価


[要約]
台湾の消費者は果実の購買・消費において、「伝統市場での購買の多さ」、「周年購買・消費的傾向の強さ」、「酸味の弱い果実志向」、「日本産果実の品質に対する高い評価と価格に対する低い評価」等の特性を有している。

[キーワード]果実、輸出、台湾、消費者、消費者評価

[担当]中央農研・マーケティング研究チーム
[代表連絡先]電話:029-838-8422
[区分]共通基盤・経営、関東東海北陸農業・経営
[分類]行政・参考

[背景・ねらい]
台湾はリンゴを主体として日本産果実の最大の輸出先であるが、ここ1〜2年頭打ちとなっており、販売戦略の再検討が必要となっている。そこで、台湾における消費者の購買・消費行動と日本産果実(リンゴ、ナシ、イチゴ)に対する消費者の評価を、台北地区(200人)と高雄地区(200人)の一般消費者に対するアンケート調査及び日本における同様な調査と比較して明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 消費者の食品の購入先としては、伝統市場(小規模な店舗や露店が多数密集した小売市場)の比率が最も高いが、リンゴ、ナシ、イチゴでも同様で70%以上の消費者が利用している。スーパーは40%前後の消費者が利用しているが、日本と比較すると半分程度にとどまる。
2. 購入頻度についてみると、リンゴは通年で週1回以上が34%と日本の4倍以上に上っている。ナシについても、通年で週1回以上購買する比率は、日本の収穫時期に週1回以上購買する比率と同等と高い(図1)。また、消費時期については、リンゴは71%、ナシは65%が1年中と回答しており、日本と比較して購買・消費の周年的な傾向が強い。
3. 消費者が果実購入時に必要と考えている情報としては、日本と同様に「糖度」、「産地名」、「品種名」、及び「農薬の使用状況」の指摘率が高い。ただし「店のお勧め」をやや重視する傾向がある(図2)。
4. 購入目的では、リンゴとナシでは年節用(春節、仲秋節)の比率が高いのが特徴であるが、リンゴ、ナシ、イチゴとも8割以上が日常消費用と回答している。
5. 食味については、リンゴ、ナシともに、日本と比較すると、やや酸味の弱いものを好む傾向が見られる(図3)。
6. 輸入果実を1年以内に購入した経験についてみると、リンゴ(74%)とナシ(73%)は高く、ポピュラーな輸入果実になっているが、イチゴ(23%)は低い。
7. 日本産果実に対する評価については、リンゴ、ナシの品質(味、形状、色)、及びリンゴの鮮度に対しては「満足」レベルの評価が得られているが、価格については「普通」レベルをやや上回る評価にとどまっている(図4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 台湾など中国系住民が主体となる東アジア消費者の購買・消費行動を予測し、販売戦略を策定・再検討する際の参考資料となる。
2. 気候、民族構成、商業構造の異なる東南アジア等へは直接適用できない。

[具体的データ]

図1 果実の購入頻度
図2 購入時に知りたい情報
図3 果実の好みの味 図4 日本産果実の評価

[その他]
研究課題名:消費者・実需者ニーズを重視した農産物マーケティング手法の開発
課題ID: 311-i
予算区分:基盤、実用技術(国産果実輸出)
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:佐藤和憲、大浦裕二、井上荘太朗

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