マイクロ波照射によるナタネ種子加熱は圧搾率を高め酸価の上昇を抑制する


[要約]
ナタネ種子の圧搾工程の前処理として、マイクロ波照射による種子加熱を行うことにより、種子細胞内の微細構造が破壊され、120℃以上の加熱では圧搾率が有意に増加し、圧搾後のナタネ油の酸価の上昇を抑制する。

[キーワード]ナタネ、搾油、マイクロ波加熱、圧搾率

[担当]中央農研・バイオマス資源循環研究チーム
[代表連絡先]電話:029-838-8909
[区分]バイオマス、関東東海北陸農業・作業技術、共通基盤・作業技術
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
水田転換畑や農地有効利用における油糧作物としてのナタネ栽培が広がり、小型搾油機が地方自治体などへ導入され、地域で搾油を行うケースが増えている。圧搾による搾油は、油糧種子の前処理によりその圧搾率を高めることが重要な技術となる。しかし、従来の焙煎等の外部加熱による前処理は、加熱温度の調整が難しく、過加熱や加熱ムラ等の問題が生じやすい。そこで、物質を内部から加熱し、加熱速度、温度制御性ともに優れているマイクロ波の利用による、圧搾率の向上と油の酸価上昇抑制への効果を解明する。

[成果の内容・特徴]
1. 1. ナタネにマイクロ波を照射することにより、種子内部から加熱され、種子細胞内の脂質顆粒周辺の微細構造が破壊される(図1)。水分8%のナタネ種子(品種キラリボシ、油分42%、初期温度23℃)400gを耐熱容器に入れ、定格高周波出力1400W、周波数2450kHzのマイクロ波オーブン(電子レンジ、NE-1401G、松下電器産業)でマイクロ波60秒照射すると、種子温度は120℃(±2℃)に達する。
2. 2. 120℃設定でマイクロ波照射することで未処理ナタネに対して圧搾率(種子乾物当たりの圧搾油量)に有意な差が現れ、145℃設定では未処理ナタネの圧搾率(18.8%)の1.4倍となる(図2)。
3. 3. マイクロ波照射を行ったナタネから圧搾・ろ過(定量用5種B)した油は、食用植物油脂の日本農林規格・なたね油の水分、酸価、けん化価、よう素価、不けん化物の基準値を満たす(表1)。
4. 4. マイクロ波照射は貯蔵中のナタネ油の酸価上昇を抑制する効果がある(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 500Wのマイクロ波オーブンを使用の場合はナタネ400g(水分8%)に対し、170秒照射で120℃に達する。
2. 種子の水分によって加熱時間と圧搾率が異なる。
3. 圧搾は試験用スクリュープレス式搾油機(S100-200B型、サン精機)を使用し、ナタネ種子を加熱後直ちに圧搾した結果である。
4. 加熱することにより油に焙煎香が生じるため、油の目的に応じて120℃〜145℃の間で設定することが望ましい。150℃以上の加熱はナタネ種子に焦げが生じるおそれがある

[具体的データ]
図1 走査型電子顕微鏡(SEM)によるナタネ種子細胞内の画像(×1000)
図2 設定温度と圧搾率との関係  図3 設定温度と酸価上昇との関係
表1 マイクロ波加熱を行ったナタネ種子から採油した油の特性

[その他]
研究課題名:温暖地における油量作物を導入したバイオマス資源地域循環システムの構築
課題ID:411-c.1
予算区分:基盤、科研費(若手B)
研究期間:2005〜2010年度
研究担当者:加藤仁、小林有一、金井源太、飯嶋渡、竹倉憲弘、冨樫辰志、谷脇憲
発表論文等:加藤ら(2008)農業施設、39(3):207-214

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