食品製造副産物を活用した発酵飼料は黒毛和種去勢牛肥育に有効である


[要約]
食品製造副産物を活用した乳酸発酵飼料は嗜好性が良好で、肥育牛の発育や枝肉成績・枝肉販売金額等は市販配合飼料を給与した牛と同等である。発酵飼料は高水分の食品製造副産物を低コストで飼料利用する方法として黒毛和種去勢牛肥育で有効である。

[キーワード]黒毛和種去勢牛肥育、食品製造副産物、発酵飼料、コスト削減

[担当]千葉畜総研・生産技術部・乳牛肉牛研究室
[代表連絡先]電話:043-445-4511
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
肉用牛肥育経営では生産費に占める飼料費の割合が大きい。そこで、コスト削減のため、食品工場等から恒常的に産出される比較的安価な食品製造副産物を乳酸発酵飼料に調製して黒毛和種去勢牛に給与し、産肉性と経済性について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 黒毛和種去勢牛8頭(父は第2平茂勝、11.9ヶ月齢)を発酵区と対照区に4頭ずつ分け、前期(5.5ヶ月)、中期(5.1ヶ月)、後期(6.3ヶ月)肥育して28.8ヶ月齢で屠畜した。発酵区は食品製造副産物を主体とする発酵飼料(表1)を、対照区は市販配合飼料および粗飼料(モミ殻:切断稲わら=1:1)を給与した。飼料中の粗飼料比(乾物)は前期、中期、後期(24.1、15.4、9.8%)として自由採食させた。対照区はビタミンAを開始時250万IU、後期は毎月50〜100万IUを経口投与した。
2. 食品製造副産物(規格外そば粉とトウフ粕、コーヒー豆薄皮、ビール粕、醤油粕)、粉砕脱水処理野菜残さ(キャベツ45%・ニンジン20%・レタス15%)、圧片トウモロコシ、ふすま、稲わらとモミ殻、発酵促進のための糖蜜(表1)をミキサーで混合後、ポリ袋内装トランスバックに詰め込み、掃除機で抜気後密閉貯蔵すると、pH4.25、有機酸含量(原物中%)乳酸2.3、酢酸0.9、酪酸0.01%と良好な発酵飼料が調製できる。
3. 発酵区の飼料乾物摂取量は対照区より多めに推移したが、肥育後期に低下したため26.4ヵ月齢以降稲わらを1.5〜2.0kg/日(4頭分)追加給与した。全期間通算の乾物摂取量は対照区8.78、発酵区9.26kg/日、終了時体重は対照区793、発酵区772kgであった。第一胃内容液pHには差はなく、発酵区ではプロピオン酸割合が少なかった(表2)。発酵区では前期および後期にβ-カロテン含量が高い野菜残さを配合したため、血漿中ビタミンA濃度が対照区よりも高く推移した(図1)。ロース芯面積を除く枝肉成績、枝肉単価および枝肉販売金額には有意な差がなかった(表3)なお、発酵区は1頭が飼料と関係なく出荷間際に死亡したため3頭の成績を示した。
4. 飼料単価を、規格外そば粉・トウフ粕(乾物25%)・コーヒー豆薄皮・モミ殻・野菜残さ(乾物9%)10円、ビール粕(乾物35%)15円、トウモロコシ43円、ふすま30円、糖蜜97円、配合飼料50円、稲わら45円として飼料費を計算すると、1頭当り対照区245,947円、発酵区165,203円となり、発酵区の飼料費を約8万円(約30%)削減できたが、枝肉販売金額は対照区が約8万円高かったため相殺された。

[成果の活用面・留意点]
1. 食品製造副産物の価格の大部分が運賃であり、自ら引き取ればコストを削減できる。
2. ニンジンはβ-カロテン含量が高いのでビタミンA制御肥育では注意する。
3. 粗飼料は発酵飼料にすると、やや軟弱になり反芻刺激性が低下する可能性がある。

[具体的データ]
表1 発酵飼料の配合割合と乾物中成分値(%) 表2 飼料摂取量・体重・第一胃内容液
表3 枝肉の格付け成績・枝肉価格  図1 血漿中ビタミンA濃度の推移

[その他]
研究課題名:安価な発酵飼料給与による肉用牛の低コスト肥育技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2004〜2008年度
研究担当者:石崎重信

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