乳牛における分娩前後の体重変動とケトーシスとの関連性


[要約]
乳牛のケトーシスでは分娩前後に体重が大きく減少するが、分娩前に減少する牛と分娩後に減少する牛に大別される。また、これらの体重減少は体脂肪およびタンパク質動員と関連し、初回発情日数の遅延にも影響する。

[キーワード]乳用牛、ケトーシス、遊離脂肪酸(NEFA)、3-メチルヒスチジン、体重変動率

[担当]静岡畜研・大家畜部
[代表連絡先]0544-52-0146
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
乳牛のケトーシスでは体脂肪および体タンパク質分解が亢進することから、体重が大きく減少することが推察される。そこで、分娩前後の体重変動と血液成分およびケトーシス発症について調査を行い、関連性を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. ホルスタイン種経産牛14頭をケトーシス群6頭、健康群8頭に分け、分娩30日前、分娩0,30,60日後に体重を測定し、体重変動率(WCR)を算出する。尚、分娩0日の体重は分娩後12時間以内に測定する。また、血液検査により、遊離脂肪酸(NEFA)および体タンパク質動員の指標である3-メチルヒスチジン(3-MH)等を測定し、あわせて初回発情日数を調査する。
2. ケトーシス群の分娩30日前〜分娩30日後(60日間)のWCRは-17.7±4.3%で、健康群の-9.8±6.1%より低い(P<0.05)(表1)。また、ケトーシス群のWCRは分娩30日前〜分娩日に低下する牛と、分娩日〜分娩30日後に低下する牛に大別される(表2)。
3. ケトーシス群の分娩日のNEFAは健康群より高く(P <0.05)、分娩0,14,30日後の3-MHは健康群より高い(P <0.05)(図1,)。分娩30日前〜分娩30日後のWCRと分娩14日後および30日後の3-MHには有意な相関が認められる(P <0.05)。
4. ケトーシス群の初回発情日数は73±16日で、健康群の48±18日より遅延する(P <0.05)(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. ケトーシス牛では、分娩前後の体重変動率(WCR)が負に変動し、体脂肪および体タンパク質が過剰に動員される。
2. 酪農場におけるケトーシス対策および繁殖指導に活用する。

[具体的データ]
表1 健康群とケトーシス群のWCR
表2 ケトーシス群のWCR
図1 血中NEFA値  図2 血中3-MH値
表3 WCRと初回発情日数

[その他]
研究課題名:レプチン、IGF-1を指標とした繁殖性向上技術の検討
予算区分:県単
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:土屋貴幸、赤松裕久、小林幸恵、佐野文彦

目次へ戻る