活性炭の残留塩素除去作用を応用した鶏生ワクチン飲水投与法


[要約]
鶏舎の給水ラインに活性炭フィルターを組み入れて、飲水中の遊離残留塩素を除去することにより、自動薬液注入器付き給水装置を使って、鶏生ワクチンを失活させることなく、効率良く飲水投与する事ができる。

[キーワード]鶏生ワクチン、飲水投与法、活性炭、残留塩素

[担当]岐阜畜研・養鶏研究部
[代表連絡先]電話:0575-22-3165
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
近年、世界各国で発生のみられる高病原性鳥インフルエンザの防疫対策として、鶏舎飲水の塩素消毒を実施している。それが生ワクチンも不活化してしまうため、生ワクチン投与時には、汲み置きした水をチオ硫酸ナトリウムで塩素除去し、それに溶解したワクチンを、1ケージ毎、給水器に入れて投与しなければならない。本成果情報は、簡易に生ワクチン飲水投与ができる方法の開発を目指したものである。養鶏研究部では、活性炭の脱塩素作用を応用し、給水ラインに活性炭フィルターを装着して生ワクチンを飲水投与する方法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 残留塩素の測定:残留塩素測定器(DPD法)DP-7Z(笠原理化工業株式会社)を用い、10段階比色測定を実施(測定範囲:0.05〜2.0mg/L)。
2. 給水装置:自動薬液注入器付き給水装置(東洋システム株式会社)を用い、スピンダウンフィルターの中にヤシ殻粒状活性炭(40〜80メッシュ:フタムラ化学株式会社)50gを充填した木綿袋(図1)を入れて塩素除去をおこなうことで、原水中の遊離残留塩素を0.7mg/Lから0.05mg/L以下に除去することができる。
3. ワクチンの効果:上記給水装置(図2)を用いて、鶏伝染性ファブリキウス嚢病(IBD)生ワクチン(ビュール706:メリアル・ジャパン株式会社)を3週齢のひな2,400羽に飲水投与後(図3)、7週齢で左列中央(A群)、右列前方(B群)、右列後方(C群)の3ケージから10羽ずつ採血し、IBD-ELISAキット(IDEXX社)によりIBDの抗体を測定した結果、抗体価はS/P比(平均値±標準偏差)で、A群(1.50±0.42)、 B群(1.48±0.47)、C群(1.57±0.63)と、いずれの場所の鶏群においても従来法と同等な成績が得られ、活性炭を利用した鶏生ワクチン飲水投与法は実用化可能である(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 従来の自動薬液注入器付き給水装置の不純物除去フィルター部分に活性炭を充填装着することにより、簡易で確実な鶏生ワクチン飲水投与が可能である。
2. ワクチン用の飲水が確実に活性炭フィルターを通過するように、流路設定やフィルター装着方法に留意する(成形活性炭フィルターを装着すると良い)。
3. 活性炭は使用頻度や流量により塩素除去作用が劣化してくるので、定期的に残留塩素濃度を測定することにより除去能力を確認して、適宜交換する必要がある。

[具体的データ]
表1 IBD生ワクチン飲水投与後のIBD-ELISA抗体価(S/P比)
図1活性炭充填  図2活性炭フィルターを装着した給水装置  図3生ワクチン飲水投与

[その他]
研究課題名:清浄ひな生産研究
予算区分:清浄ひな生産研究
研究期間:2007年度
研究担当者:後藤新平、小川正幸、酒井謙司(岐阜畜研)
横井誠、高阪務(フタムラ化学株式会社)

目次へ戻る