二毛作地帯での複数品種組み合わせと作業請負組織による飼料イネ適期収穫


[要約]
稲麦二毛作地帯で早晩性の異なる飼料イネ複数品種の計画的な作付けは適期収穫を拡大し、刈り遅れを回避できる。収穫調製を担うコントラクター2組織により、後作小麦播種適期前に約40haの適期収穫が可能となり、収量も実用的な水準を確保できる。

[キーワード]飼料イネ、複数品種、適期収穫、稲麦二毛作地帯

[担当]埼玉農総研・戦略プロジェクト第1研究担当、飼料生産担当、埼玉農総研・水田農業研究所・米・麦担当
[代表連絡先]電話:048-536-0311
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(草地)、関東東海・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
適期収穫による高品質な稲発酵粗飼料生産及び高水準の収量確保は、生産現場から飼料イネ生産技術を定着させる地域モデルとして求められている。稲麦二毛作地帯では収穫調製作業可能な期間が限定されることから、作付面積拡大に伴う作業遅延リスクによる稲発酵粗飼料の品質低下ばかりでなく、後作小麦の播種遅れが収量及び品質低下の要因となり、飼料イネの導入及び普及定着の妨げとなっている。
そこで、早晩性の異なる複数品種を計画的に作付けする飼料イネ品種を策定し、二毛作地帯における適期収穫の拡大と収量水準を向上させ、稲醗酵粗飼料品質の確保と耕畜連携によるコントラクター組織作業の有効性を実証する。

[成果の内容・特徴]
1. 2006年までの作業請負組織(M)の作業実績から、フレール型収穫機(ベール径85cm)利用体系での収穫可能面積は約60a/日である。一方、従来の‘はまさり’‘うしもえ’の2品種では適期収穫は10月上中旬の約20日間であり、期中の作業可能日数率75%(図1脚注)から、収穫面積が10haを超えると適期収穫が難しい(表1)。
2. ‘夢あおば’‘うしもえ’‘はまさり’等、早晩性の異なる品種の作付けにより収穫適期は約40日に拡大され、期中作業可能日数率を掛けて約20haの適期収穫が可能となる。これに基づき、営農組織による生産現場に適用可能な適期収穫モデル(図1)を策定して実証した結果、作業請負組織の作業実績から一組織当たり17〜21haの適期収穫が可能となる(表2)。
3. これら品種の坪刈乾物収量は、平均で1.25t/10a水準にある(データ略)。飼料イネべール実収に基づく乾物収量は0.8〜1.1t/10aで、本作付体系により一定の収量水準を確保できる(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 埼玉県北部の二毛作平野部における成果である。
2. 関東地方平野部の排水が良好な水田地帯で、飼料イネと小麦を組み合わせた二毛作地域に適用できる。
3. 収穫ロスを抑制し、ほ場実収量を上げるには自走細断型専用収穫機の活用が効果的である。

[具体的データ]
 図1 飼料イネの適期収穫モデル  表1 美里町における作業請負組織Mの作業実績
 表2 適期収穫モデル適用後の収穫調製作業実績

[その他]
研究課題名:飼料イネの生産利用の経営的評価並びに耕畜連携条件の解明と資源循環型地      域営農システムの策定
予算区分:地域総合(関東飼料イネ)
研究期間:2004〜2008年度
研究担当者:設楽秀幸、新井 守、酒井和彦、畑原昌明、吉野賢一、石井博和

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