家畜ふん堆肥風乾物のECから現物堆肥のECを推定する換算式の提案


[要約]
風乾物1:水10条件で測定されたECから、現地において家畜ふん堆肥の評価・施用の目安として用いられている現物1:水10条件でのECを換算するための式を作成し、誤差平均約0.3dS/mで推定が可能である。

[キーワード]家畜ふん堆肥、EC、換算式、風乾物、現物

[担当]愛知農試 畜産研究部 畜産環境グループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085(内563)
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
家畜ふん堆肥は製造条件によって大きく水分が異なる。このため、評価をする際には一旦乾燥して平準化する方法がよく用いられる。堆肥に関する標準的分析法ともいえる「堆肥等有機物分析法」(財団法人日本土壌協会)においてECは風乾物10gに水100mlを加えて測定(以下、風乾物EC)されており、分析機関でもこれを踏襲した手法が用いられていることが多い。しかし、現場においては堆肥の大まかな性状把握に現物堆肥10gに水100mlを加えて測定したEC(以下、現物EC)が指標として用いられることもある。
 このため、風乾物ECから現物ECの換算が可能であれば、慣行的指標数値(現物EC)の把握が可能である。また、逆方向への換算では現地で簡易に測定した数値(現物EC)から平準化された数値(風乾物EC)が把握が可能となるため、堆肥の生産管理に役立つことが期待できる。このため、現物ECと風乾物ECの双方向で換算する方法を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 家畜ふん堆肥(牛・豚・鶏及び混合堆肥)21点の風乾物10gに水100mlから順次加水してECを測定、ECと加水量双方を対数変換して作図すると、ほぼ同様の傾きを持つ直線が得られる。(図1
2. 各試料について各データの対数値から水100ml時点EC(風乾物EC)の対数値を減じて各直線をx値2の時y値が0となるように変形した後に各々直線回帰を行う。回帰によって得られた切片及び傾きの平均値により水量の増加に伴うEC対数値の減少を表す式としてy=-0.8358x+1.6642を得た。この式に逆操作(一旦減じた風乾物EC対数値の加算、対数変換したものの復元)を加えて風乾物ECから現物EC値への換算式を作成。さらに変形することで逆方向の換算式を作成。(式1
3. 作成した式の妥当性を評価するために、上記21点を含む計53サンプルについて水分、現物EC及び風乾物ECを測定し、換算式によって得られた推定値と比較して適合性を検証した。その結果誤差の平均は0.3dS/m程度であり、相関も高いことから現場における把握には十分である。(表1)(図2
4. 発酵不十分な状態での乾燥、未熟や残渣の混合した堆肥等の一部で臭気の強いものは、誤差の平均が0.7、最も大きいものでは1を超え、誤差が大きくなる傾向にある。
5. 風乾物水分が不明な場合も想定されるが、風乾時の水分含量は概ね5〜10%程度であり、希釈水の全体量から見ればわずかなもので、計算結果に大きな影響を及ぼさない。このため5〜10%程度の適当な水分含量を代入して試算することも可能である。(表1)

[成果の活用面・留意点]
1. 現地における家畜ふん堆肥の性状把握に利用できる。畜種は問わないが、豚では下記に該当するものが多いため注意が必要である。
2. 臭気を放つ堆肥等では誤差が大きくなるため換算式を適用し難い。

[具体的データ]
図1 加水量に伴うECの変化  図2 現物EC実測値と試算値の相関
式1 風乾物ECと現物ECの換算式
表1 換算式を用いた推測値と実測値の比較

[その他]
研究課題名:良質牛ふん由来堆肥製造技術の検討
予算区分:県単
研究期間:2008年度
研究担当者:増田達明

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