牛ふんたい肥の連用効果と地力窒素を考慮した「たい肥ナビ!水稲版」


[要約]
「たい肥ナビ!水稲版」を使うと、牛ふんたい肥の連用効果と水田土壌の地力窒素を考慮し化学肥料を効率的に低減する施肥設計が、短時間で簡便に計算できる。

[キーワード]水稲、牛ふんたい肥の連用効果、地力窒素、施肥設計システム

[担当]茨城畜セ・環境保全研究室、茨城農研・環境・土壌研究室
[代表連絡先]電話:0299-43-3333
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]技術及び行政・普及

[背景・ねらい]
水稲は栽培面積が多いこと、基盤整備等によって乾田化がすすみ地力が低下したこと、特別栽培米等の取り組みなどから、水田への家畜ふんたい肥の施用が期待されている。しかし、水稲の主力品種であるコシヒカリでは、過剰施肥が倒伏を助長したり、食味の低下をまねくことや、たい肥の窒素が翌作以降に残効することなどから、たい肥の連用効果や地力窒素を考慮した施肥設計が必要とされている。そこで、牛ふんたい肥を施用する水稲栽培の施肥設計が、短時間で簡便にできるシステムを開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 表計算ソフトExcel2003を用いたシステム「たい肥ナビ!水稲版」は、牛ふんたい肥を施用する水稲栽培の施肥設計ができる(図1))。
2. 牛ふんたい肥の施用量は、県栽培基準に基づき毎作乾田1t/10a、湿田0.5t/10aを既定値とするが、任意に変更できる。
3. 施肥体系は、基肥+穂肥型および専用肥料を用いる全量基肥型とする。基肥+穂肥型施肥では、標準品質米および高品質良食味米を目標とする施肥設計ができる(表1)。全量基肥型では、標準品質米のみ施肥設計が可能である。
4. 地力窒素をリン酸緩衝液抽出法により測定し、県栽培基準により基肥窒素量を決定する。全量基肥型では、基肥窒素量から肥効率を考慮した牛ふんたい肥由来窒素量を差し引き、基肥の肥料窒素量とする(図2)。基肥+穂肥型では、牛ふんたい肥由来窒素量の1/2を基肥にあてる。残りの牛ふんたい肥由来窒素量を考慮し、穂肥の肥料窒素量を栽培基準の2kg/10a から1kg/10aに減らす。
5. 牛ふんたい肥由来窒素量(kg/10a)は、牛ふんたい肥施用量(t/10a)×現物中の窒素成分率(%)×連用年数に応じた窒素肥効率(%)÷10とする。牛ふんたい肥の連用年数に応じた窒素肥効率は、施用1年目14% ・ 2年目21% ・ 3年目25% ・ 4年目27% ・ 5年目28% ・ 6年目以上30%とする。
6. リン酸およびカリについては、慣行施肥量から牛ふんたい肥由来量を差し引いて肥料リン酸量・肥料カリ量とする。なお、リン酸およびカリの肥効率は、単作で100%とみなす。
7. 県内の同意を得た畜産農家の牛ふんたい肥の生産情報(氏名・問合せ先・肥料成分値・販売価格等)を掲載し、県畜産センターホームページで公開しており、個別農家の成分値をもとにした施肥設計が可能である。
http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/nourin/chikuse/suitou_taihinavi.html

[成果の活用面・留意点]
1. 対象は県内全域のコシヒカリを中心とした水稲栽培である。
2. 牛ふんたい肥の連用年数に応じた窒素肥効率等は、茨城県農業総合センター農業研究所の平成20年度主要成果「水田における牛ふん堆肥連用時の水稲施肥診断法」をもとに設定している。

[具体的データ]
図1「たい肥ナビ!水稲版」の概要図
表1 品質目標の設定
図2 牛ふんたい肥の連用効果と施肥窒素量の考え方(概要図)

[その他]
研究課題名:家畜ふんたい肥の高度利用に関する研究
予算区分:県単
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:眞部幸子、吉尾卓宏、井上雅美、坪井真樹(茨城農研)、黒羽美穂子(茨城農研)、塚本心一郎(茨城農研)

目次へ戻る