ニホンナシ「幸水」の簡易整枝せん定法


[要約]
①予備枝から発生した先端の新梢以外は摘心し長果枝を養成、②長果枝は冬期に先端部のみを棚に固定、③側枝途中から発生した新梢は7月に1回間引、④冬期に側枝の半数は切除し半数は翌年も利用、このパターンで慣行栽培とほぼ同等の果実が収獲できる。

[キーワード]ニホンナシ、「幸水」、簡易な整枝せん定

[担当]埼玉農総研セ園研・果樹担当
[代表連絡先]電話:0480-21-1141
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
ニホンナシの主力品種「幸水」は、栽培技術の進歩によって安定生産が可能になっているが、生産者の高齢化が進み、側枝の水平誘因、先端の切り返し、新梢摘心等高度な栽培技術の継承が課題となっている。そこで、技術の未熟な後継者等にあっても就農初期段階に取り組める「幸水」の平易な整枝せん定法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 予備枝から発生した新梢は先端の1本を除き5月中旬までに摘心する。落葉後、花芽が着生している予備枝先端新梢の先端は切り返さず、水平誘引せずにアーチ状にして先端付近1か所を棚面に固定する(図1)。
2. 着果管理は枝15cmあたり1果を残し、6月下旬〜7月に小玉と変形果を補正摘果する。同時に側枝の基部付近の上芽から新梢が発生していた場合には新梢の元から切り落す(図1)。
3. その年に棚付けした枝の内、花芽(短果枝)が十分に着生している枝は翌年も利用し、先端付近から伸びている枝2〜3本を3節程度に短く切り戻し、それ以外の伸び出している枝は元から切り落とす。翌年側枝として利用しない枝と、当年側枝として利用した枝は、発生位置まで切り戻す。枝の間隔は40〜50cm開けるようにする(図1)。
4. 簡易整枝せん定した側枝の基部および先端から発した新梢は、慣行せん定した側枝とほぼ変わらない生育を示す(表1)。また、簡易な整枝を行った樹の果実は、慣行管理した樹の果実と比較して若干小さくなるが、慣行管理とほぼ同等の収量を確保できる(表2)。花芽の着生は3年間は慣行管理と変わらない(データ略)。

[成果の活用面・留意点]
この作業を単純化した整枝方法は、慣行の整枝せん定法と比較して単位面積当たりの収量がやや減少し、側枝の利用年数も短くなるなどの短所が有るが、未経験者の初歩的技術として2〜3年間の限定として活用し、栽培技術を習得した後は、慣行の管理技術に移行していく必要がある。

[具体的データ]
図1.簡易整枝せん定法のイメージ図
表1 ニホンナシ「幸水」の簡易整枝せん定が側枝の生育に及ぼす影響
表2 ニホンナシ「幸水」の簡易せん定が果実重に及ぼす影響

[その他]
研究課題名:分かりやすいせん定法の確立
予算区分:県単
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:浅野聖子、島田智人

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