カーネーション萎縮叢生症を誘発する土壌環境


[要約]
カーネーション萎縮叢生症では、栽培床の排水不良、有機物含量が高く低固相率・高液相率の土壌、土壌中の水分含量や肥料濃度の急激な変化が発症を助長する。

[キーワード]カーネーション、萎縮叢生症、発症要因、肥料濃度、栽培床の構造、土壌水分

[担当]愛知農総試・園芸研究部・花きグループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・花き
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
本症はシュートが萎縮し多数の側芽が叢生する症状を呈し、生育を著しく妨げる。原因は高温と土壌の過湿とされているが有効な対策技術がない。また、発症株の隣の株が正常であるなど発症ムラが大きい。そこで、高温と土壌の過湿だけでなく複合的要因を抽出するために、地域間、圃場間、ベンチ内の場所(栽培ネットの列ごと)の比較によって各要因の影響を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 多発地域と少発地域の比較
 どちらの地域も土壌の排水性は良好であるが、多発地域の方が有機物が多く、保水性・保肥性が高い土壌であり、三相分布では固相率が低く液相率が高い(データ略)。栽培床の構造(多発地域:低床定設ベンチ(図1)が多い、少発地域:地床が多い)に起因して、排水が十分ではないため、土壌中が高水分状態に維持されると推察される。
2. 多発地域における圃場間の比較
 土壌の全炭素含量、灌水頻度、追肥の方法、生育状況を説明変数、発症程度を目的変数として重回帰分析(数量化T類)を行った結果、全炭素含量が高いこと、灌水間隔が長いこと、高濃度肥料を低頻度で施用することが発症を助長する要因である(図2)。
3. 多発圃場におけるベンチ内の場所の比較
 土壌水分に関わる要因を説明変数、発症程度を目的変数とした重回帰分析(数量化T類)の結果、枠板とコンクリート床の隙間が狭い部分、灌水パイプのたわみの底の部分(灌水終了後もパイプ内の水が排出される場所)、灌水ノズルの設置間隔が狭い部分において発症が助長される(図3)。
4. 以上の結果、栽培床の構造に起因して排水が不良であること、及び有機物含量が高く 低固相率・高液相率の土壌であることが、発症を助長している。また、土壌中の水分含量 や肥料濃度が急激に変化することも、発症を助長する重要な要因である。

[成果の活用面・留意点]
地域・生産者・温室ごとに環境条件や土壌条件は異なり、発症を助長する要因も異なる。各要因は他の要因に影響を及ぼしており、一要因を改善しても発症を軽減できるとは限らないため、総合的に取り組む必要がある。

[具体的データ]
図1 多発地域で多く利用されている隔離ベンチ(低床定設ベンチ)
図2 カーネーション萎縮叢生症多発地域における栽培条件の発症への助長程度
図3 カーネーション萎縮叢生症多発圃場における土壌水分に関する項目の発症への助長程度

[その他]
研究課題名:低床定設ベンチ栽培カーネーションに発生する萎縮叢生症の原因と対策
予算区分:県単
研究期間:2004〜2008年度
研究担当者:犬伏加恵、大石一史

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