単為結果性ととげなし性を併せ持つ促成栽培用ナス新品種「試交05-3」


[要約]
単為結果性ととげなし性を併せ持つナス新品種「試交05-3」は、年内収量、上物率、果実形質(果皮の光沢、日持ち性)に優れ、適応作型は促成栽培である。

[キーワード]ナス、新品種、単為結果性、とげなし性、促成栽培

[担当]愛知農総試・園芸研究部・野菜グループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
愛知県のナス栽培は、9月に定植し、10月〜6月まで収穫する促成栽培が主力作型である。促成栽培の労働時間は10a当たり1,860時間と他の作目に比べて長く、ナスのとげは作業を行う上で肉体的・精神的負担となっており、ナス生産農家からは作業の省力化と快適化が求められている。そこで、労働時間の15%を占める作業を省ける単為結果性と、とげの全く発生しないとげなし性を併せ持つ新品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 「試交05-3」は次の2系統の単交雑により育成された一代雑種である。種子親には、単為結果性品種「Talina」と本県育成の「とげなし紺美」の親系統‘ASL-2’を平成14年に交配し、その交雑後代から選抜した‘PASL-13’を用いる。花粉親には、野菜茶業研究所育成の単為結果性系統‘AE-P08’と「とげなし紺美」親系統‘ASL-3’を平成14年に交配し、その交雑後代から選抜した‘PASL-2’を用いる(図1)。
2. 「試交05-3」は、年内の可販果収量が「とげなし紺美」とほぼ同等で、「千両」より多い。また、上物率は「とげなし紺美」や「千両」より高い(表1)。
3. 「試交05-3」は、「とげなし紺美」や「千両」に比べて、果皮硬度は高く、アントシアン吸光度はやや低い。また、日持ち性は高く、果皮の光沢度も良好である(表2)。
4. 「試交05-3」は、果実形質は良好で、その適応作型は促成栽培である(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 「試交05-3」は、株が立性であるため、主枝の誘引を開きぎみにする。また、「千両」に比べ、節間が長く葉も大葉になりやすいため、育苗時および定植後の初期生育は抑えぎみにする。
2. 定植後から10月下旬までと5月以降の高温期には、単為結果性が不安定な傾向があるため、この間は着果促進処理(植物ホルモン剤処理または訪花昆虫の放飼)を行う。
3. 種子の販売は全国を対象とする。

[具体的データ]
図1 「試交05-3」の育成経過と果実外観
表1 株あたり収量
表2 時期別果実品質
表3 促成栽培及び半促成栽培における「試交05-3」の現地適応性試験調査項目及び評価

[その他]
研究課題名:単為結果性とげなしナスの育成
予算区分:県単(産学官連携研究)
研究期間:2002〜2008年度
研究担当者:穴井尚子、榊原政弘、山下文秋、矢部和則、番 喜宏、田中哲司、久野哲志、吉田建実(野茶研)、齊藤猛雄(野茶研)、松永 啓(野茶研)、佐藤隆徳(野茶研)、斎藤 新(野茶研)、山田朋宏(野茶研)
発表論文等:2008年11月10日品種登録出願

目次へ戻る