イチゴ高設栽培の環境調節による省エネルギー栽培技術


[要約]
ハウス内最低夜温を5℃に下げ早朝から13℃とし、根域温度も夜間10℃に下げ早朝から15℃とする変温管理を行う。日中の換気温度を28℃に、電照時間を延長することで、イチゴ高設栽培において、品質、収量が劣ることなく化石燃料を40%以上削減できる。

[キーワード]省エネルギー、変温管理、イチゴ、日中高温管理、電照時間延長

[担当]岐阜農技セ・野菜・果樹部
[代表連絡先]電話:058-239-3131
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
促成イチゴの高設栽培では生育を旺盛にして収量を確保するためにハウス内加温及び根域加温を実施している。しかし、暖房用燃料価格の高騰による農業経営の圧迫から省エネルギー(以下、「省エネ」と略記)となる管理方法の開発が求められている。そこで、イチゴの高設栽培において慣行に比べ品質、収量が同程度で化石燃料を削減できる技術を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 省エネの栽培管理方法は以下のとおりである。ハウス内温度管理は最低夜温を慣行の8℃から5℃に下げる。そして、慣行と同様に日の出の30分から1時間程度前より早朝加温で13℃に上げる変温管理を実施する。日中は、慣行より3℃高めの28℃管理とする。根域温度は、従来の15℃一定管理から夜間10℃に下げ、早朝の4時頃から15℃に上げる変温管理を行う。電照時間は、生育の時期、状況に応じて加減するが慣行より1〜2時間延長する(表1)。
2. 省エネ管理の灯油使用量は、慣行に比べハウス内暖房分と根域加温分の合計で46〜50%削減することができる(表2)。
3. 省エネ管理の電照時間は慣行で1日2時間程度電照を行う比較的草勢の強い「濃姫」では1日1時間程度の延長よって慣行より1作で20〜50時間増加する。また、1日4時間程度電照を行う草勢の弱い「美濃娘」では1日2時間程度の延長によって慣行より100時間程度増加する(表2)。
4. 省エネ管理では、「濃姫」、「美濃娘」ともに2月までの前半収量を含め可販総収量も慣行と同等の収量が得られる(図1)。また、15g以上の大玉果率や秀品率も年次変動はあるものの慣行栽培と大差がない(図1)。
5. A重油を使用した場合の省エネ管理の経費(円/10a)は、「濃姫」では慣行に比べ電照時間の延長分の電気代、根域加温用の4段サーモ代を加えてもA重油代が60円/Lの場合で26万、80円/Lの場合で35万程度削減できる(表3)。「美濃娘」においてもほぼ同等の経費削減が可能である(データ省略)。

[成果の活用面・留意点]
1. 単棟の強化パイプハウスで少量培地耕の「岐阜県方式」の高設栽培において内張に厚さ0.05mmのPOフィルムを被覆し、炭酸ガス施用の条件下での試験結果である。
2. 「濃姫」、「美濃娘」を供試した成果であり、品種が変わると省エネ管理が変わる可能性がある。
3. 省エネ管理では根域変温管理を行うため、温風暖房機と同様に新たに根域加温機にも4段サーモを設置する。
4. 昼間高めの温度管理、電照延長の管理は、省エネ、草勢維持技術として土耕栽培(無加温も含む)にも応用が可能である。

[具体的データ]
表1 省エネ管理設定
表2 慣行栽培と省エネ栽培の灯油使用量(L)及び電照時間(時間)の比較
図1 慣行栽培と省エネ栽培の収量及び品質の比較
表3 「濃姫」おける重油価格別の経費試算モデル(円/10a)

[その他]
研究課題名:東海地域における原油価格高騰対応施設園芸技術の開発
予算区分:委託プロ(実用技術)
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:松尾尚典、越川兼行

目次へ戻る