籾殻培地利用トマト養液栽培システムにおける初年目に適した培養液の量管理法


[要約]
籾殻培地利用トマト養液栽培での量管理施肥の初年目(半促成・抑制)において、窒素施用を標準の1.5倍の1日105〜195mg/株、循環給液回数を2倍の1日16回とすると、慣行並の収量を確保できる。

[キーワード]トマト、養液栽培、量管理、籾殻培地、初年目

[担当]石川農総研・育種栽培研究部・園芸栽培グループ
[代表連絡先]電話:076-257-6911
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
石川県のトマト養液栽培では入手が容易で安価な籾殻培地の利用が普及しているが、現地では定期的な培養液の更新を伴う濃度管理を行っており、高い肥料コストと廃液の処理が課題となっている。そのため、トマトが1日に必要とする肥料分のみを毎日施用し、施肥量の削減と環境負荷の軽減を期待できる量管理の導入が望まれている。しかし、籾殻培地を用いて量管理を行うと、2年目以降は培地特性が改善し収量が安定するが、初年目の半促成・抑制作は収量が低く問題となる。そこで、初年目から慣行の濃度管理と同等の収量を確保できる培養液の量管理法を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 籾殻培地利用トマト養液栽培システムにおける標準の培養液管理では、生育ステージ別に株当たり窒素量70〜130mgの培養液を毎朝1回施用し、その後、循環液タンクに回収された廃液を1日当たり8回循環給液する(図1)。
2. 半促成作型において、初年目の培地では籾殻8L(1株分)当たり1日に約30〜50mgの窒素が籾殻の分解に伴って取り込まれているため(データ省略)、これを補うように標準の1.5倍の105〜195mgを施用することにより収量が向上する(図2)。
3. さらに、初年目の培地は2年目の培地より体積含水率が10%程度低く推移し保水性が劣るため(図3)、1日の循環給液回数を標準の2倍の16回とすることで慣行栽培と同等の収量(3.9kg/株)を確保できる(図4)。
4. 抑制作型においても、半促成作型と同様な培養液管理を行うことで標準管理と比べ20%程度増収し、慣行栽培と同等の収量(2.6kg/株)を確保できる(データ省略)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本技術は年2作体系(3月定植の半促成作型と7月定植の抑制作型・各6段収穫)における結果である。

[具体的データ]
図1 栽培システムの模式図と耕種概要
図2 初年目培地における施肥量と収量の関係(半促成)
図3 連用年数が籾殻培地の保水性に及ぼす影響  図4 初年目培地における循環給液回数が収量に及ぼす影響(半促成)

[その他]
研究課題名:北陸特有の気象・資源に即した野菜栽培技術の開発
予算区分:委託プロ(実用技術)
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:松下太洋、岡田憲一郎、藤田敏郎、吉住隆司、平井英行

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