機能性蛋白質が増加した大豆新品種候補系統だいず「東山205号」


[要約]
だいず「東山205号」は、貯蔵蛋白質グリシニンを欠失し機能性蛋白質 β-コングリシニンが増加した大豆系統である。「タマホマレ」よりやや早熟な晩生種で、収量は「タマホマレ」並、紫斑病とうどんこ病に強い。

[キーワード]機能性、新品種、大豆、β-コングリシニン

[担当]長野中信農試・畑作育種部
[代表連絡先]電話:0263-52-1148
[区分]作物、関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
国産大豆の消費拡大のためには新たな需要を生み出す必要があり、機能性を強化した食品の原料として大豆を活用することは有効な手段である。大豆貯蔵蛋白質の主要成分のひとつ β-コングリシニンには血中中性脂肪の低減効果があり、この蛋白質を含む錠菓がすでに特定保健用食品として販売されている。β-コングリシニンの生産には、大豆から抽出した貯蔵蛋白質から分離するのに大きなコストがかかっていることから、β-コングリシニンの分離性と収率性に優れた原料が求められる。
 そこで、β-コングリシニン以外の貯蔵蛋白質成分が少なく、β-コングリシニンを多く蓄積し、収量性の高い品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 「東山205号」は、平成10年に長野県中信農業試験場(農林水産省大豆育種指定試験)において、種子貯蔵蛋白質の主要成分であるグリシニンを欠失した大豆の育成を目標に、グリシニンのサブユニットTおよびUb欠失の「Tm-010」に「タマホマレ」を4回交配した系統「TmB4-010」を花粉親、「タマホマレ」(グリシニンUa欠失)を種子親とする人工交配から育成した系統である(表1)。
2. 主要な貯蔵蛋白質成分のひとつグリシニンの3サブユニットを全てを欠失し、機能性蛋白質β-コングリシニンの含有量が従来品種に比べて高い(表1、図1)。
3. 収量は「タマホマレ」「ナカセンナリ」と同等で、普通品種並の栽培適性を有する(表1、表2)。
4. 紫斑病とうどんこ病に強い(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 栽培適地は関東、東山(高冷地を除く)、近畿地域である。
2. β-コングリシニンの機能性を付加した食品の原料として利用できる。
3. グリシニンを欠失しているため、β-コングリシニンの抽出・分離にかかるコストの低減が期待できる。
4. 蛋白質含量が低く、豆腐の凝固性に影響する蛋白質グリシニンを欠失しているため、通常の製造方法では豆腐の固まり方や製品歩留まりが劣る。
5. ダイズシストセンチュウ抵抗性がなく黒根腐病にやや弱いので、連作を避け発生したことのある圃場へは作付けしない。

[具体的データ]
表1
表2 「東山205号」の病虫害抵抗性、機械収穫適性 図1 貯蔵蛋白質の電気泳動像

[その他]
研究課題名:大豆新品種育成試験
予算区分:指定試験
研究期間:1998〜2008年度
研究担当者:矢ケ崎和弘、山田直弘、坂元秀彦、関功介、袖山栄次、高松光生、谷口岳志、高橋信夫、牛山智彦、重盛勲、田中進久


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