三重県における水田畦畔から侵入するイネ科多年生雑草の分布の特徴


[要約]
キシュウスズメノヒエは海岸付近の水田に多発し中山間地域には少ない。サヤヌカグサは伊賀地域に多く、伊勢平野の海岸付近ではほとんど見られない。アシカキは地域条件に関係なく分布する。

[キーワード]イネ科多年生雑草、キシュウスズメノヒエ、サヤヌカグサ、アシカキ

[担当]三重農研・伊賀農業研究室
[代表連絡先]電話:0598-42-6354
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
水田に発生するイネ科多年生雑草は11種が確認されている。これらは草種によって発生生態や除草剤感受性の違いによる防除方法が異なるにもかかわらず、農家では「匍匐性の雑草」として同一視されることが多い。三重県では2001〜2002年に水田雑草の分布調査を実施しイネ科多年生雑草についても合わせて調査した(2002年度関東東海北陸農業研究成果情報)が、この調査では水田内の雑草を主に観察したためイネ科多年生雑草の調査精度が低かった。そこで、改めて68地域の734畦畔について発生草種と発生量の調査を行い、水田畦畔のイネ科多年生雑草の分布を把握する。

[成果の内容・特徴]
1. 三重県内の水田、水田畦畔で確認される主なイネ科多年生雑草は、キシュウスズメノヒエ、サヤヌカグサ、アシカキ、チゴザサ、ギョウギシバで、ハイコヌカグサも散見される。また、ムツオレグサ、ドジョウツナギもわずかに確認される(表1)。
2. 水田雑草として問題性の大きいキシュウスズメノヒエ、サヤヌカグサ、アシカキの分布には違いがみられ、キシュウスズメノヒエの多発地域は海岸付近の平野部に集中し、標高が高くなるにつれて発生量は少なくなる傾向を示す。また、内陸の盆地地形である伊賀地域ではキシュウスズメノヒエは確認されない(図1)。
3. サヤヌカグサは伊賀地域に多くみられる。伊勢(北、中南勢)地域の中山間でも散見されるが、標高の低い平野部では発生は少ない(図1)。
4. アシカキは伊賀地域の39%の畦畔で確認され他の地域よりやや多いものの、調査地域の全域において標高に関係なく分布している(表1図1)。

[成果の活用面・留意点]
1. イネ科多年生雑草の防除方法は草種によって異なるため、分布の特徴を把握することにより効率的な防除指導ができる。
2. キシュウスズメノヒエはシハロホップブチル剤を散布することで容易に防除可能であり、今回の調査で明らかとなった海岸部付近の甚大な発生となっている水田での防除に活用できる。
3. アシカキはベンゾビシクロン、ピラクロニルを含有する水稲用除草剤を用いることで完全ではないが抑草が可能である(2007年度関東東海北陸農業研究成果情報)。

[具体的データ]
表1 三重県におけるイネ科多年生雑草の分布(単位:%)
図1 標高とキシュウスズメノヒエ、サヤヌカグサ、アシカキの発生程度
図2 伊勢地域におけるキシュウスズメノヒエの分布例

[その他]
研究課題名:水田雑草アシカキの生態と防除に関する研究
予算区分:植調「研究調査啓発事業」
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:神田幸英、川上拓、中山幸則、山川智大

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