Pythium spinosum および P. sylvaticum によるイチゴピシウム根腐病の発生(病原菌追加)


[要約]
栃木県の土耕栽培イチゴで新たに発生した立枯性の土壌病害は、 Pythium spinosum および P.sylvaticum によるイチゴピシウム根腐病(病原菌追加)で、下位の葉柄が小豆色に変色し、罹病株の根は黒色〜暗褐色水浸状に腐敗し、生育停滞や萎凋枯死する。

[キーワード]イチゴ、ピシウム根腐病、土壌病害、新病害(病原菌追加)

[担当]栃木農試・環境技術部・病理昆虫研究室
[代表連絡先]電話:028-665-7149
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
2007年5月に栃木県那須塩原市のイチゴ四季成り性品種「とちひとみ」栽培ほ場で、原因不明の根腐れ症状を呈し、生育停滞や萎凋枯死株が発生した。そこで、発生した病害を明らかにし、今後の防除対策の資とする。

[成果の内容・特徴]
1. 2007年5月に那須塩原市の土耕栽培イチゴ「とちひとみ」で発生した病害は、下位の葉柄が小豆色に変色し、生育停滞や萎凋枯死する。罹病株の根は黒色〜暗褐色水浸状に腐敗し、クラウンにも病徴の進展が認められる(図1)。根の病斑部からは2種類の Pythium 属菌が高率に分離される。
2. それぞれの分離菌汚染土壌にイチゴ品種「とちひとみ」、「とちおとめ」を移植すると、原病徴が再現され、接種菌が再分離される。(表2)。
3. 分離菌の形態的特徴(表1)および生育温度特性(図2)は、 Pythium spinosum および P.sylvaticum の記載とほぼ一致する。rDNA ITS領域の塩基配列もこれら2種との相同性が高い(データ略)。これらのことから、発生した土壌病害はイチゴピシウム根腐病(病原菌追加)である。
4. Pythium spinosum は、3〜35℃で菌糸生育が認められ、最適温度は30℃である。また、P.sylvaticumは、5〜35℃で菌糸生育が認められ、最適温度は28℃である。2種のPythium属菌とも中温性の菌である(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. イチゴに病害を引き起こす Pythium 属菌には高温性である Pythium helicoides が報告されているが、 P.spinosum および P.sylvaticum は中温性の菌であり区別できる。
2. 過湿条件で発生が助長するため、排水対策を万全にするなどして本病による被害に注意する。

[具体的データ]
図1 イチゴ「とちひとみ」定植ほ場での病徴および有性器官
表1 分離菌の形態
表2 分離菌株のイチゴ「とちおとめ」および「とちひとみ」に対する病原性  図2 イチゴ「とちひとみ」分離菌株の
菌糸生育と温度との関係

[その他]
研究課題名:病害虫の発生生態の解明および防除技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2007年度
研究担当者:中山喜一、景山幸二(岐大)、渡辺秀樹(岐阜農技セ)、福田充、石川成寿

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