5月6半旬のコシヒカリ移植栽培における生育指標および栽培法


[要約]
5月6半旬移植のコシヒカリにおいて安定した収量および品質を確保するための適正籾数は26,000粒/u程度であり、これに誘導するためには5月中旬移植に比べ基肥量を約2割減、栽植密度を約1割増とすることが有効である。

[キーワード]移植時期、生育指標、籾数、コシヒカリ

[担当]富山農総セ・農業研究所・栽培課
[代表連絡先]電話:076-429-5280
[区分]関東東海北陸農業・北陸・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
富山県ではコシヒカリの高温登熟を回避するため、移植時期を5月上旬から5月中旬に遅らせ、8月以降に出穂させることで品質の向上を図っている。その一方で、近年は経営の大規模化に伴い、作期のさらなる拡大は不可欠となっているが、5月下旬に移植するコシヒカリの収量・品質の安定化に向けた生育指標や栽培法はまだ確立されていない。
 そこで、5月6半旬移植において安定した収量および品質を確保するための適正籾数を策定するとともに、適正籾数に誘導するための栽培法を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 28,000粒/m2程度までは、籾数が増加するほど収量は高くなる(図1)。
2. 籾数が多くなるほど乳心白・青未熟粒の発生が増加し、27,000粒/m2以上では10%を上回り、完全粒歩合が低下する(図2)。また、籾数が多くなるほど精米タンパク含有率が増加し、26,000粒/m2程度を超えると5.5%を上回る(データ省略)。
3. 以上のことから、収量および品質面から見た5月6半旬移植における適正籾数は26,000粒/m2程度である。
4. 5月6半旬移植において籾数を26,000粒/m2程度に誘導するためには、幼穂形成期の生育量を草丈76cm程度、茎数480本/m2程度、葉色3.9程度に誘導する(表1)。この指標に誘導するための栽培法は、5月中旬移植に対し基肥量を約2割減、栽植密度を約1割増とすることが有効である(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本試験は5月29日移植のデータを用いた。
2. 砂質浅耕土地帯のコシヒカリに活用できる。
3. 大規模経営体等において、移植時期を5月6半旬まで繰り下げた際の技術指針として活用できる。

[具体的データ]
図1 u籾数と精玄米重の関係(2006〜2008)  図2 u籾数と外観品質の関係(2007,2008)
表1 主要生育ステージにおける生育指標  表2 各移植時期で適正な籾数に誘導された場合の基肥量および栽植密度(2006〜2008)

[その他]
研究課題名:気象変動に伴うコシヒカリの移植時期別高品質・安定栽培法の確立
予算区分:県単
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:守田和弘、松島知昭、杉森史郎、山口琢也

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