営農モデルの策定を通して地域農業の構造変化を分析するプログラム


[要約]
水田において稲、麦類、大豆、野菜類などを作付けする際の営農モデルの作成を簡易に行うとともに、それらを用いて担い手の作付行動に基づく地域農業構造の変化を分析する。農地供給量の設定に基づき、担い手の耕作割合が具体的に推計できる。

[キーワード]営農モデル、地域農業構造変動、計画手法

[担当]中央農研・農業経営研究チーム
[代表連絡先]電話:029-838- 8481
[区分]共通基盤・経営、共通基盤・総合研究(輪作)、関東東海北陸農業・経営
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
地域の水田営農を再編していくためには、地域条件に応じた複数の営農モデルを策定し、それら担い手を中心とする地域農業の将来動向を把握・分析していく必要がある。しかし、営農現場の指導者が野菜類を含む水田の営農モデルを詳しく策定することは困難である。そのため、望ましい営農計画を簡易に試算できる手法を用いて、担い手の合理的な作付行動の視点から見た地域農業の構造変化を分析する手法を構築する。

[成果の内容・特徴]
1. 地域農業構造変化の分析手順は、図に示すように、まず、地域の耕地面積等を入力し、営農モデルの最大数を設定する。次に、担い手の営農モデルを作成する。そして、地域内で今後流動化すると思われる水田面積や、経営内の調達可能な労働力数、さらに、地域内の営農モデル別の経営数等を入力する。
2. シナリオ実行をクリックすると()、地代負担力の最も高い営農モデルから優先的に面積拡大を行うという条件の下で、分析年次までの期間、営農モデルごとの土地条件や労働制約を前提とする最適な営農計画を自動的に計算する。
3. シミュレーション結果として、地域内における営農類型別の経営面積、担い手の経営面積や耕作面積の割合等の年次別推計値を要約して表示する()。
4. 担い手の営農モデルの作成は、営農計画策定支援システムZ-BFMを呼び出して行う。このシステムは、経営概況を入力し、内在する経営指標データベースを用いて地域条件に適した作目・作型を選択し、必要に応じて利益係数などを修正するという方式で利用する。以上を設定した上で、最適解の計算を実行すると、その計算結果はシミュレーション結果一覧表や、最適計画案シートとして要約して表示される。
5. 茨城県C市T地区の農業構造変化の状況を整理し、この地域の主要な営農モデルとして3類型を設定する。そして、2003年から2008年までに発生した実際の農地供給量をもとに本手法を用いて構造変化を分析すると、担い手が規模拡大可能という前提の下では、担い手の耕作割合が的確に推計できる()。

[成果の活用面・留意点]
1. 営農計画策定支援システムZ-BFMは、JA全農営農販売企画部との協定研究に基づく成果である。
2. 地域農業構造変化は、主に水田地帯での利用を想定しており、また、分析に当たっては、事前に、地域内で流動化が想定される水田面積や、中核的な担い手経営の利益係数や労働係数に関する情報を用意する必要がある。
3. 農地流動化面積は分析期間で均等に発生し、営農モデル別の経営数、利益係数、労働制約は、分析期間中一定という前提で計算している。
4. 地域農業構造変化の分析手法は、営農計画策定支援システムZ-BFM、操作・解説マニュアルとともに中央農業総合研究センター農業経営研究チームのホームページ(http://keieikenkyu.narcb.affrc.go.jp/)からダウンロードして利用できる。

[具体的データ]
図 地域農業構造変化の分析手順と入力画面
表 シミュレーション結果の出力と茨城県T地区を対象とした適用結果
[その他]
研究課題名:関東・東海・北陸地域における個別経営体の総合的経営管理手法及び多様な主体間連携による地域活性化手法の開発
中課題整理番号:211a.3
予算区分:基盤、委託プロ(担い手)
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:松本浩一、大石亘(専門員)、梅本雅

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