集落営農の実施・未実施集落におけるソーシャルキャピタル比較


[要約]
集落営農に取り組むことができた集落は地域への期待や安心感といった「集落への信頼」の要素が高い。

[キーワード]集落営農、ソーシャルキャピタル

[担当]三重農研・経営植物工学研究課
[代表連絡先]電話:0598-42-6356
[区分]関東東海北陸農業・経営
[分類]行政・参考

[背景・ねらい]
集落営農に取り組むことは、参加農家にとって農地の保全や将来の農業経営に対する安心感、集落の結びつきや活力の向上など、経済のみでは測定できない効果もあると考えられる。しかし多くの場合、集落営農はコストや労働力等の経済・経営面を中心に評価され、安心感や集落の活力といった効果を定量化して評価した例は少ない。そこで、地域活力の測定等に用いられるソーシャルキャピタルの概念を用い、集落営農に取り組むことができた集落(以下実施集落)と集落営農未実施の集落(以下未実施集落)、それぞれの経営主と経営主以外の間のソーシャルキャピタルを測定し、集落営農への取組が集落の活力に及ぼす効果を考察する。

[成果の内容・特徴]
1. 県内の集落営農実施集落13(表1)と未実施集落12、計25集落において、集落内農 家全戸の経営主と経営主以外の合計2,717人に対し、表2に示すソーシャルキャピタル (以下SC)に関するアンケート調査を実施した。調査結果を実施集落経営主、実施集落 経営主以外、未実施集落経営主、未実施集落経営主以外に分類して集計し、50グルー プの集計結果の因子分析により抽出した第1因子を「集落への信頼に関する因子」、第 2因子を「集落活動に関する因子」とした(表2)。2つの因子の因子得点を集落の「集 落信頼指数」と「集落活動指数」として比較する。
2. 各グループの「集落信頼指数」と「集落活動指数」により散布図を作成する。実施集 落と未実施集落の間で比較すると、実施集落のほうが「集落信頼指数」が高い傾向があ る。同様に経営主と経営主以外の間で比較すると、経営主のほうが「集落活動指数」が 高い傾向がある(図1)。
3. 集落営農に取り組むことができた集落は地域への期待や安心感といった「集落への信 頼」の要素が高いこと、また、集落の経営主は「集落活動への参加意識」が高いことが 示される。

[成果の活用面・留意点]
1. この成果は、集落営農育成の参考とできる
2. 本調査は現状のみの調査であり、集落営農の進展とSC向上の因果関係までは明らか にできていない。今後、本調査の未実施集落について経年調査することで、因果関係も 明らかにできると考えられる。

[具体的データ]

表1 集落営農実施集落の判断基準

表2 ソーシャルキャピタルに関する調査項目の因子分析の結果

図1 実施集落、未実施集落別の経営主と経営主以外の比較

[その他]
研究課題名:みんなで挑戦三重の集落営農育成事業
予算区分:県単
研究期間:2008年度
研究担当者:山端直人、糀谷 斉

目次へ戻る