1うね2条の平うね栽培で肥料施用量を削減できる「平うね内部分施用機」


[要約]
1つの平うねで2条の露地野菜を栽培する平うね栽培において、基肥を移植苗の近傍にのみ帯状に施用することができ、単位面積当たりの肥料施用量を30〜50%削減できる。成形板を交換することによって、1うね1条の露地野菜作にも汎用的に使用できる。

[キーワード]露地野菜、平うね、部分施肥、施肥量削減、環境負荷低減

[担当]中央農研・高度作業システム研究チーム
[代表連絡先]電話:029-838-8812
[区分]共通基盤・作業技術、関東東海北陸農業・作業技術
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー等の露地野菜生産において、生産コストの低減及び環境負荷低減のために、化学肥料の使用量を削減する技術の開発は重要である。これまで成形うねの移植苗を中心とする部分にのみに肥料を土壌と混和して施用する「うね内部分施用機」による1うねに1条の野菜を栽培する単うね栽培(うね幅:57〜75cm、うね高さ15〜22cm)における施肥量の削減効果について明らかにしてきた(平成17年度研究成果情報)。しかし、関東以西の露地野菜においては平うねや平うねにマルチを張る1うねに2条の野菜を栽培する平うね栽培で生産されている場合も多く、このようなうね形状においても施肥量を大幅に削減できる施肥量削減技術が求められている。

[成果の内容・特徴]
1. 「平うね内部分施用機」(図1)は肥料ホッパーと平うね成形機からなり、すそ幅78〜135cm(天幅60〜120cm)、うね高さ10〜30cmの平うねを成形できる。出力12.5〜24.5kW(17〜33PS)程度の比較的小型のトラクタに取り付けることができる。本機は、平うね成形機の後方にマルチャーを取り付けることによって平うねにマルチを同時に張ることができる。
2. 平うね成形機は耕うん部と平うね成形板からなる。野菜を1つの平うねに2条の露地野菜を栽培するため、耕うん部の耕うん軸には2枚のディスクが2組取り付けられている。2組のディスクの前方に施用された肥料はこのディスク間だけ土壌と混和される。混合される範囲は幅15〜25cm(ディスク間で調節可)、深さ20cmである(図2)。
3. 埼玉県、石川県の平うねや平うねにマルチを張ったブロッコリー栽培において、それぞれ現地実証試験を行った結果、基肥施用量を30〜50%削減しても生育・収量は慣行施用量の場合と同等であり、遜色はない。また、初期生育が良好で、ブロッコリー等栽培期間が短い野菜では有効である(表1)。
4. 平うね成形機の成形板を高うね成形板に交換することによって、これまでと同様な「うね内部分施用機」(図1左上)となり、キャベツ、ハクサイ、カリフラワー、ダイコン等1うね1条の単うね栽培(うね幅[条間]:57〜75cm、うね高さ15〜22cm)で生産する露地野菜作に活用でき、それぞれ基肥施用量を30〜50%削減できる(データ略)。

[成果の活用面・留意点]
1. 平うねや平うねにマルチを張る1うね2条の平うね栽培で生産する露地野菜作に活用できる。また、成形機を交換することによって、1うね1条の単うね栽培の露地野菜作にも活用できる。
2. 「平うね内部分施用機」は約100万円で2009年秋から市販されている。また、取付用マルチャーは約10万円、交換用の高うね成形板は約20万円である。
3. 肥料施用量の削減効果は圃場の土壌成分や作物、栽培法で異なるので、作付前後の土壌分析等確認試験を行い、削減量を確定していくことが望ましい。

[具体的データ]

図1 「平うね内部分施用機」と主要諸元

図2 平うね施用機の部分施用部と施用資材の混合域

表1 平うねでのうね内部分施肥によるブロッコリーの初期育成と収量(2009年度)

[その他]
研究課題名:農作業の高精度化・自動化等による高度生産システムの開発及び労働の質改善のための評価指標の策定
中課題整理番号: 223a
予算区分: 基盤
研究期間: 2005〜2009年度
研究担当者: 屋代幹雄、松尾健太郎、齋藤秀文
発表論文等: 屋代ら(2006)、「畝内帯状攪拌施用機」、特許 第3806735号

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