ソルガムサイレージを主原料とした発酵TMRを用いた交雑種肥育技術


[要約]
ソルガムサイレージを主原料とする発酵TMRを交雑種肥育牛に全期間または前期および後期に給与すると、対照区に比較して発育に優れ枝肉重量は重い。自給飼料の割合は対照区の5%に対し、発酵TMR給与区は全期間区20%、前後期区15%に向上する。

[キーワード]高消化性ソルガム、発酵TMR、交雑種肥育牛、飼料自給率

[担当]長野畜試・酪農肉用牛部
[代表連絡先]電話:0263-52-1188
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
飼料価格が高騰する中、飼料自給率の向上が重要な課題となっている。発酵TMRは、自給飼料や濃厚飼料を混合後、保存性を高めるために発酵させた飼料で、乳牛のみならず、肉用牛にも利用が拡大する傾向にある。そこで、高消化性ソルガム「葉月」のロールベールサイレージを主原料とした発酵TMRを交雑種肥育牛に給与することで自給飼料の利用を促進し、輸入飼料の削減を図る。

[成果の内容・特徴]
1. 高消化性ソルガム「葉月」サイレージを主原料に調製した発酵TMRを交雑種肥育牛に全期間(全期間区)または、前期および後期(前後期区)に給与して、前期にチモシー乾草、ルーサンペレットおよび配合飼料、中後期に稲ワラと配合飼料を給与した対照区と比較する。供試した発酵TMRはソルガムサイレージの混合割合を原物あたり前期55%、中期51%、後期29%とし、その他に濃厚飼料および稲ワラを混合する。乾物あたりのTDN含量は前期74%、中期76%、後期78%である。
2. 試験終了時の体重は、前後期区は対照区に比較して有意に大きく、全期間区も大きい傾向を示す。1日増体重(DG)も同様に前後期区が対照区に比較して有意に高く、全期間区も高い傾向を示す(表1)。
3. 濃厚飼料摂取量は、前後期区が対照区に比較して有意に多く、全期間区も多い傾向を示す。しかし、自給飼料の割合(TDN)は対照区の5%に対し、発酵TMR給与区は全期間区20%、前後期区15%に向上する(表1)。
4. ソルガムサイレージのβ−カロテン含量は19.3mg/kgで、チモシー乾草の1.2倍、稲ワラの32倍である。血漿中のレチノール、β-カロテン含量は、全期間区が対照区に比較して高く推移する。前後期区は、肥育中期に対照区と同程度まで低下するが、発酵TMRを再開した肥育後期には、全期間区と同程度まで上昇する(図1)。
5. 発酵TMRの給与により枝肉重量は増加し、ロース芯面積も大きくなるが、皮下脂肪は厚くなる。BFS-No.は全期間区が対照区に比較して高い傾向で(P=0.07)、発酵TMRの給与により、脂肪色は黄色化する(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. ソルガムサイレージを主原料とした発酵TMRは交雑種牛の肥育飼料に利用できる。
2. 試験開始時の供試頭数は去勢1頭、雌3頭で、雌主体の成績である。

[具体的データ]

表1 交雑種肥育牛の発育成績および資料摂取量

図1 血漿中のレチノールとβ-カロテンの推移

表2 交雑種肥育牛の枝肉成績

[その他]
研究課題名:自給飼料及び低未利用資源をベースとした交雑種肥育技術の確立(えさプロ)
予算区分:委託プロ(えさ)
                         研究期間:2006〜2009年度
研究担当者:水流正裕、井出忠彦、古賀照章、佐藤 隆、市川祐司、大久保吉啓

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