自給飼料を活用した乳牛の排せつ水分コントロール


[要約]
カリウム含量の少ないイネWCSやコーンサイレージを主体とした低カリウムTMR飼料を給与すると、排せつ水分量の削減が可能であり、堆肥化に必要な水分調整材を低減できる。

[キーワード]自給飼料、排せつ水分、カリウム、乳生産、泌乳牛

[担当]群馬畜試・大家畜係
[代表連絡先]電話:027-288-2222
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
乳牛のふん尿混合物は他の家畜と比べ水分含量が多く、堆肥化にはオガクズ等の水分調整材にかかる経費と堆肥調整にかかる労力の負担が大きい。飼料中のカリウム含量が排せつ水分中の尿量を左右すると考えられており、カリウム含量の少ない自給飼料を有効に活用し乳生産量を維持でき排せつ水分量を削減する栄養管理技術を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. カリウム含量の少ないイネWCSやコーンサイレイージを用いれば、飼料中のカリウム含率を1%程度とする低カリウムTMR飼料が調製できる。カリウム含量の多いイタリアンサイレージを用いるとカリウム含率が1.5%程度のTMR飼料となる(表1)。
2. 低カリウムTMR飼料の給与は、各泌乳期で飼料摂取量や乳量および乳生産に影響しない(表2)。
3. カリウム摂取量が減少すると、尿およびふん水分量を合わせた排せつ水分量は減少する()。
4. 低カリウムTMR飼料の給与により、各泌乳期で排せつ水分量を10〜20%程度低減でき、堆肥化に必要なオガクズを20〜35%程度削減できる(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 栄養管理技術から堆肥化に必要な経費の削減と省力管理が可能となる。
2. カリウム要求量が増加する夏期の高温時での検討が必要である。
3. カリウムは、トウモロコシやイネWCS等には少なく、イタリアンなどの牧草に比較的多いことから、利用の際には日本標準飼料成分表を活用したり飼料中のカリウム濃度を実際に測定して飼料設計することが望ましい。

[具体的データ]
表1 飼料の組成及び成分含量  表2 供試牛・摂取量・乳生産
表3 排せつ量と堆肥化に必要な副資材量
図 カリウム摂取量(乾物)と排せつ水分量の関係
[その他]
研究課題名:自給飼料を有効に利用した排せつ糞水分含量の低減 予算区分:県単
研究期間:2008〜2009年度
研究担当者:都丸友久
発表論文等:都丸(2009)群馬畜試研報、(15):1-8

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