鶏胚盤葉細胞の凍結保存法の改善


[要約]
鶏胚盤葉細胞の凍結方法において、凍結溶液中の牛胎子血清濃度及び凍結時の細胞密度を上昇させることにより、名古屋種以外の3品種(ロードアイランドレッド、白色レグホーン及び三河種)でも50%以上の高い融解後の細胞生存率を得ることができる。

[キーワード]胚盤葉細胞、凍結保存、生存率、血清濃度、細胞密度

[担当]愛知農総試・畜産研究部・家きんグループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
名古屋種など貴重な鶏の遺伝資源を家畜伝染病の発生による消失の危険性から回避するため、胚盤葉細胞を凍結保存する方法の実用化に取り組んでいるが、実用化するためには凍結融解後の細胞生存率の向上が重要となる。これまでに名古屋種胚盤葉細胞では、凍結溶液中の牛胎子血清(FBS)濃度及び凍結時の細胞密度を上昇させることにより、凍結融解後の細胞生存率が向上することが確認されているが、他の品種では検討事例がない。
 本研究では、凍結溶液中のFBS濃度及び凍結時の細胞密度を高めた凍結方法(以下、高濃度・高密度法とする)により、名古屋種以外の3品種(ロードアイランドレッド、白色レグホーン、三河種)の胚盤葉細胞について融解後の生存率の検討を行う。

[成果の内容・特徴]
1. 鶏胚盤葉細胞の凍結保存法において、従来法は凍結溶液中のFBS濃度が20%、凍結時の細胞密度が1胚/250μLであるが、今回の高濃度・高密度法では、FBS濃度が80%、細胞密度が1胚/25μLと高めている(図1)。
2. 胚盤葉細胞の生存率測定にはトリパンブルーを用い、染色により実施するが、死滅した細胞が青色に染色される。融解直後では死滅した細胞は少なく生存率が高いが、融解3時間後では死滅細胞の割合が高くなり、時間経過により細胞生存率が低下する(図2)。名古屋種胚盤葉細胞において、高濃度・高密度法による融解直後の細胞生存率は69.5%と高く、融解3時間後でも59.7%と高い(表1)。なお、従来法である低濃度・低密度法を実施した場合の細胞生存率は、融解直後で60.6%、融解3時間後で40.7%である。
3. 高濃度・高密度法による胚盤葉細胞の凍結融解直後及び3時間後の細胞生存率は、ロードアイランドレッドが72.7%と56.7%、白色レグホーンが86.8%と61.3%、三河種では74.2%と53.0%になり、名古屋種と同様に融解直後及び3時間後のどちらにおいても50%以上の高い細胞生存率を得ることができる(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 鶏の胚盤葉細胞において本方法で凍結保存を行うことにより、融解3時間後でも高い細胞生存率を得ることができることから、鶏の遺伝資源の保存について有効利用が可能となる。

[具体的データ]
図1 胚盤葉細胞の凍結・融解方法(高濃度・高密度法)
図2 名古屋種胚盤葉細胞の顕微鏡写真
表1 名古屋種における胚盤葉細胞の凍結融解後の生存率
[その他]
研究課題名:効率的な胚盤葉細胞の凍結保存と生殖系列キメラ率向上技術の開発
予算区分:実用技術
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:長尾健二、渡邉久子、中村明弘、近藤一、新實竜也(家畜改良セ岡崎牧場)、筒井真理子(家畜改良セ岡崎牧場)、伊藤裕和

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