ソルガムサイレージを主原料とした発酵TMRにおける開封後の安定性


[要約]
高消化性ソルガム「葉月」サイレージを主原料に発酵TMRを調製する場合、密封後14日以上貯蔵することで、開封後、好気的条件下でも発熱せず、安定した発酵品質を保持できる。

[キーワード]高消化性ソルガム、発酵TMR、発酵品質、サイレージ

[担当]長野畜試・酪農肉用牛部
[代表連絡先]電話:0263-52-1188
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(草地)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
飼料価格が高騰する中、自給飼料の生産拡大と有効な利用技術の開発が求められている。ソルガム「葉月」は、bmr遺伝子を持つ高消化性ソルガムで従来のソルガムと比較して茎葉部のTDN含量が10%以上高いことが特徴で、トウモロコシに代わる獣害回避作物としても有効である。一方、発酵TMRは、自給飼料や濃厚飼料を混合後、保存性を高めるために発酵させた飼料で、乳牛のみならず、肉用牛にも利用が拡大する傾向にある。しかし、密封後の貯蔵期間や品質の安定性等、発酵品質に関して未解明な点が多い。そこで、高消化性ソルガム「葉月」サイレージを主原料に発酵TMRを調製し、発酵品質とその安定性を評価する。

[成果の内容・特徴]
1. 発酵TMRの乳酸含量は、3日間の貯蔵で急激に上昇し、それ以上貯蔵しても上昇しない。これに対し酢酸+プロピオン酸含量は、貯蔵日数の経過に伴い増加する。貯蔵直後のpHは5前後であったが、14日間の貯蔵で4程度に低下する。しかしそれ以上貯蔵してもpHはほとんど低下せず、安定した発酵品質を示す(表1)。
2. 貯蔵期間が7日以内の発酵TMRは開封後品温が急激に上昇するが、14日以上貯蔵したものは、開封後品温は上昇しない(図1)。
3. 貯蔵期間が7日以内の発酵TMRは、好気的条件下で14日間放置した場合、有機酸含量および水分が低下してpHが上昇する。一方、貯蔵期間が14日以上のものは、開封後14日間放置しても酢酸+プロピオン酸含量は増加するが、その他の成分は変わらない(図2)。
4. 以上の結果から、高消化性ソルガム「葉月」のサイレージを主原料に調製した発酵TMRは、貯蔵期間が7日以内では、開封後、品温の上昇による品質の劣化をもたらすが、14日以上貯蔵することで、開封後も発熱せず、安定した発酵品質を保持できる。

[成果の活用面・留意点]
1. 高消化性ソルガム「葉月」サイレージを主原料とした発酵TMRの製造と利用場面で活用できる。
2. ソルガムサイレージは、品種により多様な発酵品質を示すため、「葉月」以外のソルガム品種では本成績と同様になるとは限らない。
3. 供試した発酵TMRは原物比でソルガムサイレージ55%、濃厚飼料39%、稲ワラ6%の割合で混合して調製した肥育牛用飼料である。
4. 発酵TMRの調製は、原料を撹拌混合後、小型ポリプロピレンサイロ(容量75L:直径48cm、高さ42cm)に踏圧密封して、屋内で貯蔵した成績である。貯蔵期間中の6月中旬〜8月下旬の平均気温は、21.7℃である。
5. 本成績は、夏期の高温期に行った試験結果である。冬期間は、夏期に比較して発酵が進みにくいが、開封後、好気的変敗も起こりにくく、品質劣化しない場合が多い。

[具体的データ]
表1 発酵TMRの貯蔵日と開封直後の発酵品質の関係
図1.ソルガム「葉月」を主原料とした発酵TMRの品温に及ぼす影響
図2 ソルガム「葉月」を主原料とした発酵TMRの貯蔵日数と開封後の発酵品質の関係
[その他]
研究課題名:自給飼料及び低未利用資源をベースとした交雑種肥育技術の確立(えさプロ)
予算区分:委託プロ(えさ)
                         研究期間:2006〜2009年度
研究担当者:水流正裕、井出忠彦、後藤和美、清沢敦志、大久保吉啓

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