草地酪農型乳製品の購買意欲を高める要素の解析


[要約]
地元産乳製品の販売拡大を図るため、外部流通に適応することを目的にマーケティング調査を実施し、新鮮さをイメージさせるコピーや原料・製造方法のこだわりの表示、新規商品開発サイクルの短縮等が指摘された。指摘に基づき試験的に包装・販売法を改善したところ、売上げが向上した。

[キーワード]放牧、草地、酪農、マーケティング、ブランディング

[担当]静岡畜研・環境飼料部
[代表連絡先]電話:0544-52-0146
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(草地)
[分類]行政・参考

[背景・ねらい]
草地酪農を展開する西富士開拓地域では、生産した牛乳を自らの手で販売するという長年の念願を、1996年に地元酪農家が株主の「富士ミルクランド」として具現化した。さらに今回、地域振興の振興を図るため、静岡県公募型行政課題研究としてミルクランド鰍ェ地域農産物振興の牽引役となるために、富士ミルクランドブランドおよびミルクランド製品のブランディングとマーケティングの方向性を検討した。具体的には、来客数に影響を受ける訪問型施設における商品販売の弱点を克服するために、「自営外部店舗、大型販売チャンネルに適合する商品作り」に焦点を絞って各調査・分析を実施した。

[成果の内容・特徴]
1. 大規模販売チャンネルバイヤーへの聞き取り調査
土産店卸商、大手スーパー、通販業者等の仕入購入担当者にミルクランドの主力商品を提示し、改善点等を質問した。主な指摘は、包装デザインの牧場イメージ欠落。配色・文字レイアウトのアイキャッチ性不足。各種コンテスト受賞歴の表示不備。ミルクランド=富士山のイメージ欠落。付加価値販売のための説明・表示不足。埋没防止のための個性的デザイン必須。売場活性化のための多商品化(新規商品の継続的開発)必須。「富士山」「朝霧高原」等の財産言語の効果的利用や、消費方法(楽しい食べ方)の提案が必要、といった意見が得られた。
2. 消費者の購買意欲等に関する調査
富士ミルクランドのホームページに懸賞付きアンケートページを設け、主力商品や欲しい商品、ブランドロゴ等について一般消費者に意見を求めた。いずれの商品からも「新鮮な牛乳」「自然」のイメージを強く受ける一方で、ブランド力アップに必要な財産言語である「富士山」「朝霧高原」の出現頻度は低かった。また、「朝霧高原」から連想される商品像としては、主力商品の「放牧牛乳」が他を圧倒して多かった(図1)。
3. 具体的対応結果
調査結果に基づき対応を行い、人気商品である「ストライプチーズ」の包装を黄色から草原をイメージする緑主体にし、上下に目立つ金色ストライプ、富士山と草原をシンプルにリデザインしたロゴマークをつけた。さらに、食品コンクール受賞歴を示す金色のシールを貼付して販売したところ、売上が1割近く向上した(図2)。新規商品展開例として「生キャラメル」に県内特産の三ヶ日ミカンや牧ノ原緑茶の味を練り込んだ新商品を開発。キャラメル販売ブースの売上が向上した。食べ方の提案として「おさしみチーズ」をスライスして、ワサビ醤油やトマトスライスに載せて食べる提案をしたところ、高級系スーパーのチーズ売場の商品として採用された。

[成果の活用面・留意点]
1. 地元産乳製品の特徴を活かして販路拡大を目指す場合、特色のある地元農産物を積極的に取り込んだ新商品開発が不可欠であり、流通側が強く求める「知名度向上」や「話題性提起」の手法としても利用できる。
2. 「売りたい商品」と「買いたい商品」には差があることが多く、ターゲットとする「買い手」の要望の分析や「買いたくなる」売り方の調査は各産地において独自に行う必要がある。
3. 差別化商品の流通には生産関連の情報公開が重要であるため、生産現場でも常に、安心・安全・清潔を意識した生産活動を徹底する必要がある。

[具体的データ]
図1 「富士山・朝霧高原」から消費者がイメージする商品

図2 聞取り結果に基づいた包装・販売方法の改善(例)
[その他]
研究課題名:朝霧高原の草地景観の観光資源的価値向上を基軸とした地域振興
予算区分:県単(公募型研究)
研究期間:2008〜2009年度
研究担当者:片山信也、佐藤克昭、稲垣敦之、天野正一(ミルクランド(株))、清久利(ミルクランド(株))

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