自然分解性ポットを用いたセイヨウナシ「ル レクチエ」の苗木生産と定植方法


[要約]
自然分解性ポットで養成した茎頂培養マメナシ苗に「ル レクチエ」を7月下旬に休眠枝接ぎすることで、苗木ほを使わずに1年早く苗木を養成することができる。定植後の枯死は発生せず、定植後1年で十分な生育量を確保することができる。

[キーワード]自然分解性ポット、マメナシ、ル レクチエ、休眠枝接ぎ、苗木

[担当]新潟農総研園研セ・育種栽培科・果樹研究チーム
[代表連絡先]電話:0254-27-5555
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
セイヨウナシ「ル レクチエ」の生理障害軽減に有効な優良系茎頂培養マメナシ台木は、深根性で植え傷みしやすく、定植後の初期生育不良や枯死等が年によっては8割以上も発生する場合がある。そこで、自然分解性ポットを用いて、定植後の植え傷み防止を図るとともに、従来の苗木ほでの苗木養成に比べてスピーディな優良苗木の供給を可能とする。

[成果の内容・特徴]
苗生産の具体的な手順は図1のとおりである。
1. 穂木の準備:「ル レクチエ」の太さ4mm程度の極細い休眠枝を冬期に採取し、ポリエチレン等で包装し、接ぎ木時まで冷蔵する。
2. 台木:直径10pの自然分解性ポットに鉢上げした茎頂培養マメナシ苗を用いる。7月下旬時点で基部径4mm以上のものを利用する。
3. 接ぎ木とその後の管理:7月下旬に切り接ぎを実施し、パラフィン系のテープで固定する。接ぎ木後は寒冷紗で遮光し、かん水と定期的な追肥を行う。8月下旬接ぎでは苗の生育が劣るので接ぎ木時期が遅れないようにする(図2)。
4. この方法により、苗木ほを使わずに従来よりも1年早く、台木径5mm、苗全長50p程度の苗が生産できる。
5. 定植方法とその後の生育:消雪後にポットのまま本ぽに定植する。7月下旬接ぎ苗の枯死はみられず、定植1年後に樹高は150p以上に成長し、十分な主幹長が確保できる(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本技術は直径10p、J社製のピートモス素材自然分解性ポットを用いた結果である。
2. ポットから出た根が土中に伸びないよう、遮根シート等を敷き、その上で養成する。
3. 接ぎ木後のかん水は1日4回程度、追肥はIB化成等を7〜9月に1ヶ月1回、1ポットあたり3粒程度を施用する。定植後は3日以上晴天が続く場合に5月までかん水を行う。追肥はIB化成等を3〜7月に5粒ずつポットの回りに施用する。
4. 降雪前に定植する場合は雪害や、野鼠等の被害防止のための雪囲いを徹底する。
5. 本技術のマメナシ台木は新潟園試選抜系統N-1、N-7系統の茎頂培養苗を用いた。なお、茎頂培養マメナシ苗は「JA全農にいがた」が生産しており、新潟県内の生産者に優先販売を実施している。

[具体的データ]
図1 自然分解性ポットを用いた「ル レクチエ」優良苗木生産の流れ
図2 自然分解性ポット苗の接木時期と苗の大きさ 図3 マメナシ台「ル レクチエ」自然分解性ポット苗の定植後の生育
[その他]
研究課題名:北陸の気象・重粘土壌条件下での高商品性省力果樹栽培技術の開発
予算区分:新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業(北陸地方領域)
研究期間:2005〜2009年度
研究担当者:松本辰也、本永尚彦、根津潔

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