被覆複合肥料の全量基肥表面施肥による花壇苗施肥管理技術


[要約]
花壇苗生産で、被覆複合肥料の全量基肥施肥(鉢上げ時に表面施肥)を行うことで、粒状高度化成肥料の表面施肥と比べ品質が向上する。

[キーワード]パンジー、ペチュニア、サルビア、被覆複合肥料、全量基肥、表面施肥

[担当]群馬県農業技術センター・園芸部・花き係
[代表連絡先]電話:0270-61-0066
[区分]関東東海北陸農業・花き
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
群馬県における花壇苗類の施肥体系は、鉢上げ後、根が活着した段階で大粒の高度化成肥料を、粒数を数えながら手で表面施肥する方法が一般的で、一部の品目は出蕾〜開花期に葉色を観察しながら、さらに液肥を施用している。
 そこで花壇苗生産における、品質向上並びに追肥作業の省力、流通段階の肥料切れ防止を目的とした、被覆複合肥料の全量基肥施肥管理技術を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 秋出しパンジーの3.5号ポット生産では、鉢当たりリニア70日型(14-12-14)を1.5〜2.0g施用すると、粒状高度化成I(10-10-10)と比べ分枝数が多く、開花が早まり、開花揃いも良くなる傾向がある。特に1.5g施用は、鉢サイズに対して草姿のバランスが良い株径となる(表1写真1)。
2. 春出しペチュニアの3.5号ポット生産では、鉢当たりリニア40日型(14-12-14)を1.0g施用すると、粒状高度化成Iと同程度の生育となり、開花揃いが良い傾向がある。肥料コスト面でもほぼ同等である(表2写真2)。
3. サルビアの3.5号ポット生産では、鉢当たり春出しはリニア40日型を3.0g施用、夏出しはシグモイド70日型(14-12-14)を2.0g施用すると、粒状高度化成Iと比べ葉色が濃く、分枝数も多く、商品性に優れた苗が生産できる(データ省略)。

[成果の活用面・留意点]
1. パンジーでは、肥料が苗に触れると肥料焼けにより、生育が不揃いになるため、苗から離して施肥する。
2. 被覆複合肥料は肥料分の溶出に温度の影響を受けるため、気温の低い高冷地などで本技術を利用する場合には、溶出期間の短いタイプに変更する。
3. 被覆複合肥料の施肥作業では、花き鉢物用定量施肥器を使うことで、粒状高度化成Iの手置き施用と比べ、作業時間を6割削減できる。
4. 鉢上げ時に表面施肥を行う方法は、培土に予め被覆複合肥料を混合する施肥方法と比べ、1鉢当たりの施肥量が均一で、培土の保存もできるため、計画的かつ、ロスのない生産が可能となる。
5. 2009年12月現在の肥料実勢価格に基づく1g当たりの施肥コストは、リニア型が0.29円、シグモイド型が0.30円、慣行の粒状高度化成Iでは0.16円を要する。さらに慣行は追肥として、鉢当たり0.10円の液肥施用が必要な場合がある。

[具体的データ]
表1被覆複合肥料「リニア70日型」における施用量の違いが8月播種10月出荷パンジーの生育に
表2被覆複合肥料「リニア40日型」における施用量の違いが1月播種3月出荷ペチュニアの生育に
写真1パンジー開花時の状況 写真2ペチュニア開花時の状況
[その他]
研究課題名:花壇苗類の高品質・省力安定生産技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2008〜2010年度
研究担当者:古屋修、渡邊康浩、春山実、橋登

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