黄花色シクラメンを識別するDNAマーカーの開発とその育種的利用


[要約]
黄花色と黄花色以外のシクラメンを材料に用いてカルコン異性化酵素遺伝子(CHI)の塩基配列の違いから黄花色を識別するDNAマーカーを開発した。本マーカーを利用することで黄花色個体を早期選抜できる。

[キーワード]シクラメンカルコン異性化酵素遺伝子、黄花色識別マーカー

[担当]岐阜県農業技術センター・花き部
[代表連絡先]電話:058-239-3131
[区分]関東東海北陸農業・花き
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
黄花色のシクラメンは希少性が高く、高単価を確保できる品種であるが、播種から開花までの期間が長く、交配育種の労力および栽培スペースの無駄が生じている。シクラメンの黄花色は、劣性で1遺伝子に支配され、カーネーションと同じカルコン2'-グルコシド(Ch2'G)の蓄積が要因である。また、カーネーションの場合、CHIの崩壊がCh2'G蓄積に関与していることから、シクラメンのCHIから黄花色を識別するDNAマーカーを開発し、このマーカーの育種的利用について検討した。

[成果の内容・特徴]
1. 黄花色品種「ムーンルージュ」と黄花色以外の品種「ピッコロ」、「アケボノ」のCHI塩基配列を比較した結果、「ムーンルージュ」のCHIの上流部に、約10kbpのCHIとは異なる塩基配列が挿入されていた(図1)。
2. 黄花色3品種および黄花色以外の25品種を用い、「ムーンルージュ」のCHIの塩基配列から黄花色品種を識別するDNAマーカー(MRCHI-F: 5’-CATACCGTAGAAGATAGGT AGGAAGG-3’, MRCHI-R: 5’-AGTCCTCGATTTGGACGGCCGTGA-3’)を開発した(図2表1)。
3. 開発した黄花色識別マーカーと登録されているCHIの塩基配列から作成した非黄花色識別マーカーを用い、「ムーンルージュ」と黄花色でないシクラメン品種との交配後代、3交配組合せ34個体を用いて黄花色識別マーカーの精度を検証した結果、黄花色の識別率は100%であった(表2)。

[成果の活用面・留意点]
本マーカーは黄花色品種「ムーンルージュ」、「ゴールデンボーイ」、「ネオゴールデンガール」、黄花色以外の品種「ピュアホワイト」、「パステルフリンジ系品種」、「キューピット系品種」、「パステルコンパクター系品種」、「ニューパステル系品種」、「スコルテン系パステル」、「イブ系品種」、「ピアス系品種」、「ピッコロ」、「ビクトリア系品種」、「普通種フリンジ系品種」を用いた場合に利用できる。これ以外の品種に使用する際は、バンドの増幅パターンを確認する必要がある。
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[具体的データ]
図1 シクラメンCHI遺伝子構造の差異 図2 黄花色識別マーカーを用いたバンドパターン
表1 黄花色識別マーカーの開発に供試した品種
表2 黄花色識別マーカーによる識別結果
[その他]
研究課題名:シクラメンの効率的な新品種育成に関する研究
予算区分:県単
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:松古浩樹
発表論文等: 松古(2008)育種学研究.10(1):288
松古(2009)育種学研究.11(1):284

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