石油代替エネルギー・メタノール型燃料電池のイチゴ栽培への利用


[要約]
イチゴ栽培においてメタノール型燃料電池の安定的稼働と排熱の株元局所加温、電気の電照利用が可能であり、排出される炭酸ガスも実用濃度に達する。また、燃料電池稼働に係るランニングコストが温風暖房機の約半分となる。

[キーワード]イチゴ、燃料電池、石油代替、局所加温、電照、炭酸ガス施用

[担当]三重農研・園芸研究課
[代表連絡先]電話:0598-42-6358
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
昨今、地球温暖化に対する懸念がに高まっており、化石燃料の削減などによって温暖化の原因である二酸化炭素の発生を抑制していく対策が重要になってきている。燃料電池もその対策の一つで、将来普及が見込まれる発電装置として期待が寄せられている。このようなことから、化石燃料の削減対策の一環として三重県の施設園芸の重要品目であるイチゴにおいて、メタノール型1kw燃料電池を用いて、装置から得られる電気、熱、炭酸ガスのイチゴ栽培への利用による生産技術の開発とランニングコストの評価を10aの高設栽培ハウス(現地試験)を用いて行う。

[成果の内容・特徴]
1. 燃料電池からでる温風の送風配管方法は親ダクトを二重配管(配管方法2)とすることで効率的に行える(図1)。
2. 専用ダクトによる株元局所加温(排熱温度60℃)によってマルチ内の夜間温度は2℃以上上昇する(図2)。また、収量は無加温に比べて高くなる(データ省略)。
3. ハウス内の炭酸ガス濃度は、早朝には実用濃度の1800ppm程度となる。また、 発電された電気は、早朝3時間連続電照(データ省略)及び後夜半7時間間欠電照に利用でき、燃料電池は安定的に稼働する(図3)。
4. イチゴ栽培における燃料電池稼働にかかる10aあたりの燃料費は、1ヶ月46,980円となり、通常の温風暖房機の約半分となる(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本研究で使用した直接メタノール型燃料電池は、石油代替エネルギーとして期待されるが、現時点では量産されていないことから、装置の価格が高いという問題がある。しかし、近い将来、この燃料電池が普及し、量産効果によって価格が下がれば、農業分野への利用も大いに期待できる。
2. 燃料電池から排出される温風量が少ないので、補助的な送風装置が必要で、暖房方法は株元局所暖房とする必要がある。
3. 温風は水分を多く含むことから、円滑な送風のために親ダクトに水抜き装置(親ダクトにコック付き塩ビのチーズ管を取付け排水する)が必要である。

[具体的データ]
図1 配管方法 図2 マルチ内温度の変化
図3 ハウス内炭酸ガス濃度と発電等の状況(間欠電照)
表1 燃料電池稼働にかかる10aあたりの燃料費
[その他]
研究課題名:東海地域における原油価格高騰対応施設園芸技術の開発
予算区分:実用技術
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:薮田信次、小西信幸、人見周二(GSユアサ)、石丸文也(GSユアサ)

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