粉末茶の粉砕方式が粒子径と喉越し感に及ぼす影響


[要約]
粉末茶の粉砕方式を比較すると、積層式で石臼式より粒子径の小さい粉末が得られ、気流、相対流式は石臼並みの粒子径が得られる。ボールミル式は10時間以上の処理により石臼式と同等の粒度が得られる。粒子径が同じであれば、粉砕方式の違いが喉越し感に与える影響は少ない。

[キーワード]チャ、粉砕、粉末茶、粒子径、懸濁安定性

[担当]静岡農技研(茶研セ)・新粉末緑茶プロジェクト研究
[代表連絡先]電話:0548-27-2311
[区分]関東東海北陸農業・茶業
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
近年、粉末茶の需要は大きく、市場には種々の茶が流通しているが、粉末茶に関する物理科学的な情報は少なく、勘に負うことや抹茶の技術を応用することも少なくない。現在、県プロジェクト研究により故磯谷氏(静岡機械製作所)が考案した静岡の独創的な製茶法である高温加湿熱気製茶法を発展させ、緑鮮やかな粉末緑茶を低コストで生産する新規粉末緑茶製造法の開発を目指している。そこで、高温加湿熱気製茶法で得られた茶をより嗜好性の高い微粉末茶に加工し、商品性を高めるため、粉砕技術について種々の検討を加え、粉砕方式が茶の粒子径と喉越し感に及ぼす影響について明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 同一の荒茶を4種の粉砕方式で処理した場合(標準的条件)、積層式で最も粒子径が小さい粉末茶が得られる。気流式、相対流式はほぼ石臼式並の粒子径であるが、粉砕機の規模が大きく、価格も高価である。比較的安価で導入しやすいボールミル式は、2時間の粉砕では粒子径が最も大きい粉末茶となる(表1)。
2. 各粉砕処理された粉末茶の成分は、遊離アミノ酸、カフェイン、カテキン類ではほとんど変化はしないが、熱に弱いビタミンCは積層式で約15%減少する(表1)。
3. ボールミル式は、10時間以上の処理で石臼式と同程度(16.6 μm)の粒子径となる(図1)。彩度は処理時間の経過に伴って増し、11時間で石臼式と同等に達する。色相角度は、11時間までほとんど変化しない(データ未記載)。
4. 茶懸濁液の沈降量については、粒子径が小さい粉末茶で少ない傾向である(図2)。
5. 粒子径が喉越し感に及ぼす影響を3点識別(嗜好)法により調査した結果、差が大きい15.4と42.1μm(差26.7μm)の組合せで識別し(P<0.01)、粒子径の小さい15.4 μmの喉越し感が良い(P<0.001)(表2)。
6. 石臼式とボールミル式の同程度の粒子径の茶の喉越し感等に有意差が認められず、粉砕方式の影響はない(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本試験は、高温加湿熱気製法で製造した荒茶を供試した。
2. 平均粒子径の測定:湿式は茶100ppm溶液を島津製レーザー回折式SALD-2200により体積基準で測定した(攪拌あり)。乾式は茶粉末をそのまま日機装製レーザー回折式AEROTRAC7340により測定した。

[具体的データ]
表1 各粉砕方法の概要と結果
図1 ボールミル式による粉砕時間と粒子径の変化 図2 懸濁安定性試験結果
表2 官能検査結果
[その他]
研究課題名:高温加湿熱気を活用した新規粉末緑茶の製造に関する研究
予算区分:県単プロジェクト
研究機関:2007〜2009年度
研究担当者:小林利彰、後藤正、大宮琢磨、名波謙三(潟ニグリーン)、宮村希衞(葛{村鐵工所)、松下芳春(松下園)

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