長野県で発生した雑草イネ越冬種子の生存動態と完全防除の要実施期間


[要約]
長野県で発生した雑草イネ(トウコン)の越冬種子は、地表面では越冬2年目、作土層の地中では越冬3年目までに死滅する。また雑草イネが多発した圃場では、移植栽培での完全防除を2年間実施することにより、根絶に近い状態まで収束する。

[キーワード]雑草イネ、越冬生存性、埋土種子、作付転換、完全防除

[担当]長野県農業試験場・育種部、作物部
[代表連絡先]電話:026-246-9783
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
近年、長野県内の一部地域では、脱粒性の高い雑草イネ(別名:トウコン、雑草性赤米)の発生が問題となっている。雑草イネの防除手段として、直播から移植への転換や、他作物への転作といった作付転換が有効である。雑草イネの発生は、防除が徹底できなかった水田に集中する傾向にあるので、特定の水田で一定期間行うのが現実的な実施方法である。このローテーションは、復田した際に残存した埋土種子からの再発生の可能性が無い年限を考慮して実施する必要がある。
 本試験では、長野県内より収集された雑草イネについて、地表面および地中で越冬した種子の生存年限をそれぞれ明らかにする。また雑草イネが多発生した圃場で完全防除を実施し、根絶まで要する年限を検証する。

[成果の内容・特徴]
1. 地表面種子の越冬1年目では、全ての在来種で生存個体が存在し、6月下旬の積算出芽率は0.3%〜50.3%まで在来種間で大きな差がある(表1)。越冬2年目以降には、全ての在来種で生存個体は存在しない(表1)。
2. 埋土種子の越冬1年目では、全ての在来種で生存個体が存在し、生存率は4.0%〜86.7%まで在来種間で大きな差がある(表2)。越冬2年目では、一部の在来種で0.3%の生存個体が存在する(表2)。越冬3年目では、全ての在来種で生存個体は存在しない(表2)。
3. 複数回代かきと晩植を行い、除草剤の体系処理および手取り除草による完全防除(雑草イネ種子の漏生を起こさない徹底防除)を実施すると、作付転換3年目で雑草イネの発生は認められなくなる(図1)。
4. 以上の結果、土中での生存種子は越冬3年目までに死滅へ至ることから、作付転換および完全防除を2年間実施すれば、それ以後の埋土生存種子からの再発生は無いと判断される。

[成果の活用面・留意点]
1. 雑草イネの根絶に必要な完全防除の実施期間が明確となり、防除に要する労力とコストの集中および効率化が図れる。また、雑草イネの多発により水稲直播栽培を休止した圃場では、作付転換後における直播再開への目安となる。
2. 雑草イネの完全防除は、有効成分を含む初期剤および中期剤を組み合わせた除草剤の体系処理(平成14年度 成果情報)と、雑草イネの出穂後2週間以内の手取り除草(平成19年度 成果情報)を併用し、雑草イネの種子を圃場内へ取りこぼさないこと。
3. 本成果は、宮島・高橋(1974)によって1971年〜1972年に収集され、長野県農業試験場で保存されていた在来種の一部と、牛木(2005)によって2002年に長野県内で収集され、中央農研センターで保存されていた在来種の一部を供試し、長野県内の気象条件下で検証した結果である。

[具体的データ]
表1 地表面種子における出芽率 図1 完全防除の実施による雑草イネ発生個体数の推移
表2 埋土種子における生存率
[その他]
研究課題名:雑草イネの発生生態と防除技術
予算区分: 県単
研究期間:2004〜2008年度
研究担当者:細井淳、牛木純(北海道農研)、酒井長雄、青木政晴、渡邊寛明(中央農研)、赤坂舞子(中央農研)

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