酒造好適米「神の穂」の吸水割れ発生要因


[要約]
高度精白した酒造好適米「神の穂」の吸水時の割れには、収穫時の刈り遅れ、籾の過乾燥に加え、登熟初期の高温が影響を及ぼす。また、玄米胴割粒率と吸水割れ程度の関係は明確ではない。

[キーワード]吸水割れ、酒造好適米、神の穂、乾燥籾水分、収穫時期、登熟気温

[担当]三重農研・伊賀農業研究室
[代表連絡先]電話:0595-37-0211
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
高度精白した酒造好適米は、醸造途中の洗米工程で吸水時に割れ(以下「吸水割れ」)が生じることがある。吸水割れが発生すると、吸水時間の調整が難しく、仕込み作業における大きな障害要因となる。三重県で育成した酒造好適米「神の穂」においても吸水割れが認められ、問題となっている。しかし、吸水割れの発生要因に関する知見は少ないことから、「神の穂」の吸水割れに影響を及ぼす要因を探る。

[成果の内容・特徴]
1. 吸水割れ粒は、線状の亀裂が生じる「亀裂粒」、横や縦の割れが生じる「割れ粒」に分類できる。それらの発生程度を指標として、吸水割れ程度を簡易評価できる(表1)。この評価法によって、時間経過とともに急速に発生する吸水割れを短時間で正確に評価でき、2ヵ所割れ、縦割れなど、割れの程度の差も評価できる。
2. 登熟が進むにつれて、吸水割れ程度が高くなる傾向にある。適期収穫した「神の穂」は、吸水割れ程度2.5〜3であるが、出穂後50日以降に収穫すると、吸水割れ程度が3以上になる(図1)。
3. 「神の穂」の吸水割れと乾燥時の籾水分には相関関係が認められ、籾水分14〜15%では、吸水割れ程度約3であるが、籾水分が12%の過乾燥になると吸水割れ程度が約4に上がる(図2)。
4. 「神の穂」の吸水割れ程度と出穂後10日間の平均最高気温には正の相関が認められる。平均最高気温が高くなるにつれて吸水割れの発生程度が高くなる傾向にあり、「五百万石」に比べ高温の影響を受けやすい。なお、「神の穂」の吸水割れ程度と玄米胴割粒率の関係は、明確ではない(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 玄米サンプルを研削式小型精米機で60%まで高度精白した白米の吸水割れ程度を評価した。
2. 適期収穫、適正な籾水分への乾燥調整を行うことにより、吸水割れの助長を防ぐことができる。
3. 本試験の結果は、登熟期の高温を回避するための移植時期設定の基礎資料となる。

[具体的データ]
表1.「神の穂」の吸水割れ程度の評価
図1.収穫時期と吸水割れの関係(2008,2009) 図2.乾燥籾水分と吸水割れの関係(2008)
図3.登熟期の気温と吸水割れの関係(2008,2009)
[その他]
研究課題名:新しい三重の酒造好適米品種の地域特産化事業
予算区分:県単
研究期間:2008年〜2009年
研究担当者:川上拓、神田幸英、山川智大

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