80℃16時間水抽出とCOD簡易測定キットによる畑土壌可給態窒素の簡易判定


[要約]
80℃16時間水抽出は各種の土壌、堆肥連用土に適用でき、生土にも適用可能な畑土壌の可給態窒素簡易抽出法である。抽出液のCODを簡易測定キットで色識別することにより、迅速かつ簡易に判定できる。

[キーワード]可給態窒素、簡易測定、堆肥連用畑土壌、有機態炭素量、化学的酸素消費量

[担当]中央農研・資源循環・溶脱低減研究チーム
[代表連絡先]電話:029-838-8826
[区分]共通基盤・土壌肥料、関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
近年の肥料原料価格高騰や有機質資源の利用促進を背景として、土壌診断に基づく施肥管理の重要性が高まっている。可給態窒素は土壌の窒素肥沃度の指標として、重要な診断項目であるが、測定法が煩雑で、既存の簡易評価法も土壌の種類等による適用制限があるため、多くの土壌分析機関で診断項目に含まれていない。そこで、日本の畑土壌に適用性が高く、生産現場で迅速かつ簡易に操作できる可給態窒素の簡易判定法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 80℃16時間水抽出法によって抽出される有機態窒素量と抽出操作で増加するアンモニア態窒素量の合計(抽出全窒素量−原土の無機態窒素量で算出)は、土壌の種類や堆肥施用歴の有無にかかわらず、30℃4週間畑培養による可給態窒素含量とy=0.4x(R2=0.75)の正相関が認められる(データ省略)。
2. 80℃16時間水抽出法では、抽出有機態炭素量からも可給態窒素含量を推定可能である(図1)。
3. 80℃16時間水抽出法による有機態炭素量(TOC)と化学的酸素消費量(COD)は極めて高い正相関を示す(図2)。このため、市販のCOD簡易測定キットを用いた可給態窒素含量の簡易推定が可能である(図3)。
4. 80℃16時間水抽出法では、生土でも風乾土と同様の結果が得られる(データ省略)。
5. 80℃16時間水抽出法は、電気ポットやCOD簡易測定キットなど、家庭で調達可能な道具で実施できる(図4)。また、市販のミネラルウォーターを抽出・希釈用に使用でき、毒・劇物薬品を使用しないので、生産者や技術指導機関および民間土壌分析センター等での簡易診断が可能である。

[成果の活用面・留意点]
1. 露地畑土壌で検討した抽出法であり、施設土壌については未検討である。また、水田土壌では評価精度が劣る。
2. 抽出温度および時間は厳守する。電気ポットの代わりに80℃に設定した通風定温乾燥機を利用すれば、一度に多くの試料を処理できる。
3. 使用したCOD簡易測定キットは、パックテスト(測定範囲0〜100mgO/L:株式会社共立理化学研究所製)である。
4. 電気ポットの使用に際しては,火傷等に十分注意する(マニュアル参照)。
5. 詳しくは「畑土壌可給態窒素の簡易判定マニュアル」を参照のこと(5月公開予定)。

[具体的データ]
図1 80℃16時間水抽出有機態炭素量と可給態窒素含量の関係
図2 80℃16時間水抽出法による簡易COD測定値と抽出有機態炭素量の関係
図3 80℃16時間水抽出法による簡易COD測定値と可給態窒素含量の関係
図4 80℃16時間簡易水抽出法の操作手順

[その他]
研究課題名:有機性資源の農地還元促進と窒素溶脱低減を中心にした農業生産活動規範の推進のための土壌管理及び窒素負荷予測技術の開発
中課題整理番号:214q.1
予算区分:高度化事業、委託プロ(省資源型農業)
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:上薗一郎、森泉美穂子、加藤直人
発表論文等:上薗一郎、加藤直人、森泉美穂子、土壌肥料学雑誌、81(1):39-43

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