おとり植物ボリジへのコレマンアブラバチ放飼によるイチゴでのワタアブラムシ防除


[要約]
ボリジ(ムラサキ科)を、マルチ被覆する10月中下旬にハウスに6〜8m間隔で設置し、その1ケ月後にコレマンアブラバチをボリジの株元に放飼すると、ボリジ上のワタアブラムシに寄生して、その後、イチゴに発生するワタアブラムシの加害を防ぐことができる。

[キーワード]イチゴ、天敵、アブラムシ、コレマンアブラバチ、ボリジ

[担当]埼玉県農林総合研究センター
[代表連絡先]電話:0480-21-1114
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(虫害)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
イチゴ栽培ではアブラムシ類の収穫期防除が欠かせず、そのための農薬散布が、ハダニ類の天敵である、カブリダニ類の利用上の障害にもなっている。一方、ボリジ(ムラサキ科)にはイチゴよりも早くワタアブラムシが発生し、そこに、多数の土着のアブラバチが寄生するのを認めた。そこで、ボリジをおとり植物として、そこにコレマンアブラバチを放飼する方法により、イチゴのアブラムシ類防除技術を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. イチゴ栽培で、ボリジをおとり植物として長期間、利用するには、開花までに要する日数が最も長い10月播種がよい。(図1)。
2. マルチ被覆後にボリジの植栽間隔は、コレマンアブラバチの行動範囲が、ボリジを中心に半径3〜4mであった(図2)ことから、6〜8mにする。
3. マルチ被覆後にボリジを設置し、その30日後に10a当たり1,000頭に相当するコレマンアブラバチをボリジの株元に設置数に分割して放飼するボリジ+コレマンアブラバチ区では、イチゴ上でのワタアブラムシの密度が対照区のピーク時と比較して約1/3にとどまり、薬剤散布をしなくてもイチゴ果実への加害を防げる(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. ボリジは過繁茂になりやすいので、地植えにするよりもポットやプランターに播種し根域を制限するとよい。
2. ボリジは乾燥に弱いので、適宜かん水を要する。
3. 10月播種でも1月中旬頃から開花が始まり、株の伸長が止まるので、摘花して新芽の展開を促すと株が長持ちする。
4. ボリジの種子は1粒10円程度であり、市販のムギクビレアブラムシを活用するより経費は安い。

[具体的データ]
図1 播種期の違いによるボリジ
の開花まで日数
図2 ボリジからの距離とイチゴのワタアブラムシに対するコレマンアブラバチの寄生率
図3 ボリジを利用したイチゴ栽培でのアブラムシ類の発生消長
[その他]
研究課題名:天敵誘引植物ボリジを用いたイチゴのアブラムシ生物的防除体系の確立
予算区分:新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:畠山修一、原沢正美、河野勉、峯岸直子、武田正人、印南ゆかり、宇賀博之根本久(埼玉農総研)
発表論文等: 宇賀ら(2007)埼玉農総研報7:84-85
畠山、根本(2008)埼玉農総研報8:19-24

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