コムギ品種「ニシノカオリ」の株腐病抵抗性程度と三重県における播種適期


[要約]
コムギ品種「ニシノカオリ」は株腐病に抵抗性が弱く、発病しやすい。三重県における本病被害軽減のための「ニシノカオリ」の播種適期は11月中・下旬である。

[キーワード]コムギ、ニシノカオリ、株腐病、Ceratobasidium gramineum、播種時期

[担当]三重農研・循環機能開発研究課
[代表連絡先]電話:0598-42-6357
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
三重県では水田転換畑のコムギ栽培で、2003年産から「ニシノカオリ」を本格的に導入して以来、「ニシノカオリ」を主体に株腐病の発生が問題となっている。発生原因を究明するため、現地の株腐病発生圃場において、本県の主要なコムギ品種である「あやひかり」、「タマイズミ」、「ニシノカオリ」、「農林61号」を対象に、株腐病に対する抵抗性を評価する。さらに、株腐病の発生が特に問題となる「ニシノカオリ」の播種時期と発病程度の関係を明らかにすることにより、生産者への播種適期の指導に活用できる。

[成果の内容・特徴]
1. 「ニシノカオリ」は「あやひかり」、「タマイズミ」、「農林61号」に比べて、株腐病に対する抵抗性が弱い。三重県で株腐病の発生が「ニシノカオリ」で問題となった原因は、本品種の本病に対する抵抗性が弱いことによる(図1)。
2. 三重県では、株腐病発生圃場で「ニシノカオリ」を11月上旬に播種すると、株腐病の発病程度が著しい。11月中旬播種では発病は認められるがその程度は軽く、11月下旬播種ではほとんど発病が認められない。株腐病の発病を軽減するには、11月中旬・下旬の播種が有効である(図2)。
3. 播種時期を遅らせることにより発病を軽減できる要因は、株腐病菌が発芽後のコムギに感染可能な土壌温度に遭遇する日数が減少することによる(表1)。
4. 株腐病発生圃場での「ニシノカオリ」の収量は、11月上旬播種に比べ11月中旬以降で多い(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 「ニシノカオリ」の播種開始時期を決めるときの参考となる。
2. 山口(植物防疫、1960)はムギ類の株腐病について、発芽直後の初期生育の段階で感染し、感染に適した土壌温度は20℃が適温で、25℃、15℃がこれにつぎ、10℃でかなり少なく、5℃以下では感染できないと報告している。

[具体的データ]
図1 コムギ品種と株腐病の発病
図2 株腐病発生圃場における「ニシノカオリ」の播種時期と発病 播種時期の違いと発芽後の土壌温度別の遭遇日数
図3 株腐病発生圃場における「ニシノカオリ」の播種時期と収量
[その他]
研究課題名:コムギ縞萎縮病および株腐病の防除対策の確立
予算区分:県単
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:黒田克利、鈴木啓史

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