ピーマンモザイク病防除における低透過性フィルム利用による臭化メチル処理量の削減


[要約]
ピーマンのPMMoVによるモザイク病に対して、低透過性フィルム被覆での臭化メチル剤25〜35kg/10a処理は、慣行のPOフィルム被覆での50kg/10a処理と同等の防除効果がある。

[キーワード]低透過性フィルム、臭化メチル、ピーマン、PMMoV、モザイク病

[担当]茨城農総セ鹿島特産
[代表連絡先]電話:0299-92-3637
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
臭化メチル剤はモントリオール議定書締約国会合において2005年以降先進国で原則廃止されたが、代替技術のないピーマンのモザイク病(PMMoV)においては不可欠用途臭化メチルの使用が同会合の承認の元で認められおり、鹿島南部地域のピーマンもその対象である。不可欠用途臭化メチル剤の使用に当たっては、低透過性フィルムによる処理量の削減も同会合から求められているが、当地域の砂質土壌での適切な削減量は明らかにされていない。そこで、当地域における低透過性フィルムを利用した場合の臭化メチル剤の削減量を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 臭化メチル剤処理において、ガス透過率がPO(ポリオレフィンフィルム)の約1/1,300程度である低透過性フィルムで被覆すると、25〜40kg/10aの処理量で慣行区(50 kg/10a)と同等に全試験期間を通じてPMMoV によるモザイク病の発病が認められない(表1)。また、PMMoV 罹病根の不活化効果は25 kg/10aまで慣行区と同等以上の防除効果が認められる (表2)。
2. 土壌センチュウは、抑制栽培の低透過性フィルム25 kg/10a処理区の地表下10cmで多く確認され、消毒ムラが生じる可能性がある(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本成果は製品名バリアスター(内外層にポリエチレンを配し、中間層にガスバリアー性を有したエバール系樹脂を挟んだ三層構造のフィルム)を用いた、砂質土壌における試験結果に基づいたものである。
2. 低透過性フィルムでの被覆は、慣行の被覆資材での臭化メチル剤50 kg/10a処理に対し、臭化メチル剤の処理量を25〜35kg/10aに削減できる。ただし、25kg/10aでは地表面にセンチュウが多く存在する部分が確認されているため、消毒ムラが生じる可能性がある。そのため、センチュウが多いほ場では35kg/10a以上の使用が望ましい。
3. 低透過性フィルムの価格は、同規格のPO(ポリオレフィン)フィルムと比べ約50,000円/10a高い。一方、臭化メチルのコストは、50kg/10a使用に比べ、35 kg/10aでは42,000円/10a、25 kg/10a では70,000円/10a安い(1,400円/500gで試算)。


[具体的データ]
表1 臭化メチル剤の低透過性フィルム被覆処理とPMMoVによるモザイク病の発病株率
表2 臭化メチル剤の低透過性フィルム被覆処理とPMMoV罹病根の残存活性

表3 臭化メチル剤の低透過性フィルム被覆処理と土壌センチュウ数
[その他]
研究課題名:ピーマンにおけるウイルス病害防除技術の検討
 (臭化メチル削減技術緊急確立事業)
予算区分:県単
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:木村宏明、小川孝之、吉田早苗(茨城県病害虫防除所)

目次へ戻る