吟醸酒向け水稲新品種「石川酒52号」の育成


[要約]
「石川酒52号」は、「山田錦」並みの醸造適性を有する酒造好適米である。成熟期は「五百万石」並みの早生品種である。稈長は「山田錦」より短く、収量性は「山田錦」よりも優れる。

[キーワード]石川酒52号、酒造好適米、吟醸酒向け、早生品種

[担当]石川農研・育種栽培研究部・育種グループ
[代表連絡先]電話:076-257-6911
[区分]関東東海北陸農業・北陸・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
吟醸酒に適する「山田錦」は、本県では収穫時期が遅く、良質の米を安定生産することができないため、他県産米が使用されている。そのため、石川県内の酒造メーカーからは、本県独自の品種を用いた新たな石川ブランド吟醸酒づくりの要望が強い。これに応えるため、「山田錦」並みの吟醸酒向け醸造適性を持ち、本県での栽培に適した酒造好適米品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 「石川酒52号」は、1992年に「予236(五百万石/フクヒカリ)」を母本、「新潟酒28号(後の「一本〆」)」を父本とした交配組合せから育成した品種である。
2. 出穂期、成熟期は「山田錦」より早く「五百万石」とほぼ同等の早生である(表1)。
3. 稈長は「山田錦」よりも20cm程度短く、穂長は「山田錦」並みで、穂数は「山田錦」より少ない(表1)。
4. 耐倒伏性は「山田錦」より強く、脱粒性は「山田錦」の“易”に対し“難”である(表1)。穂発芽性は「山田錦」の“やや易”に対し“中”である(表2)。
5. 精玄米重は「五百万石」並みである。玄米千粒重は「山田錦」よりも1g程度小さく、「五百万石」並みである(表2)。心白発現率は「山田錦」より高い(表2図1)。
6. 醸造試験における精米は、2004〜2005年の2ヵ年で無効精米歩合が「山田錦」とほぼ同等である(表3)。また、吟醸酒での官能試験では「山田錦」と同等の評価である(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 2007年度に品種登録申請を行い、2008年度から県内で栽培(2008年度の栽培面積3.4ha、2009年度16ha)を開始したところであり、今後も県内酒造メーカーの需要動向に応じて普及を図る。
2. 2009年度は県内の酒造メーカー17社でブランド酒を製造中であり、今後も県内産米を原料に用いた石川ブランドの吟醸酒を製造することができる。原料となった「石川酒52号」は一般公募により付与された「石川門」の愛称で流通している
3. 千粒重の低下に繋がるもみ数過剰になるような過剰施肥や、蛋白含有量が高まるような遅い追肥は避ける。

[具体的データ]
表1 立毛中の調査成績
表2 収量等の調査成績
表3 醸造試験における成績結果
図1 「石川酒52号」の玄米と精米(左図)、および稲体(右図)
[その他]
研究課題名:水稲新品種育成研究
予算区分:県単
研究期間:1992〜2008年度
研究担当者: 小林大樹、中村啓二、松本範裕、黒田晃、小牧正子、野村央文、大西良祐、 高瀬裕章、松村洋一、永畠秀樹、橋本良一、武田康一、吉秋斎
発表論文等:農林水産省品種出願番号 第21865号 出願公表(2008年3月4日)

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