重粘土地帯におけるダイズ「エンレイ」の多収事例に基づく収量構成要素と生育指標


[要約]
生育期間のダイズの主茎長と分枝数は、収量との間に相関関係が認められ、多収型の生育・収量構成要素が生育診断に利用できる。また、近年のダイズの収量構成要素は、多収型の指標値に比較して、莢数と百粒重が小さく、収量低下の要因となっている。

[キーワード]ダイズ、エンレイ、多収、多収型、生育指標、収量構成要素

[担当]新潟農総研・作物研・水田高度利用チーム
[代表連絡先]電話:0258-35-0836
[区分]関東東海北陸農業・北陸・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
重粘土地帯のダイズは生育や収量の年次変動が大きく、近年では収量の低下も指摘されている。そこで、作況試験データより実収300kgの多収栽培を目標とした収量構成要素と生育指標を提示し、生育診断による栽培管理技術の導入を図る。

[成果の内容・特徴]
1. ダイズの収量は播種後50日(開花期約5日前)の生育(主茎長、総節数、分枝数、茎太)と正の相関が高く、また、主茎長では播種後50日以前、分枝数では播種後50日以降にも正の相関が見られる(表1)。収量を高めるには、播種後50日までに生育量を確保し、下位分枝を早期から確保する必要がある。
2. 播種後50日の主茎長と分枝数について、主茎長では32cm未満、分枝数では9本/m2未満になると収量が低下するので、生産者実収300kg/10aを想定した多収型の生育指標を目安に生育診断を行う(図1図2図3)。
3. 最近10年間の収量構成要素について、多収型指標値と比較すると、莢数(総莢数、有効莢数、節当莢数)と百粒重が小さく、収量低下の要因となっている(表2)。収量を高めるためには、生育量の確保とともに着莢の維持と結実条件の改善が必要である。

[成果の活用面・留意点]
1. 生産者実収300kg/10aを多収型の目標収量とし、圃場利用率と収穫ロスを考慮し、坪刈り収量400kg/10aに相当すると仮定した。累年作況試験データから平均収量400kg/10aとなるように多収年を抽出し、生育および収量構成要素の多収型指標値を示した。
2. 主茎長と分枝数の生育指標から栽培期間中の生育診断が可能となる。また、生育指標は各栽培管理技術の要否を判断するための目安となる。
3. 新潟県長岡市の細粒灰色低地土での試験結果である。

[具体的データ]
表1 収量と時期別生育との単相関係数
図1 主茎長と収量との関係 図2 分枝数と収量との関係
図3 多収事例に基づく主茎長と分枝数の生育指標

表2 収量及び収量構成要素等
[その他]
研究課題名:根圏環境の改善と生育診断による北陸産大豆の多収栽培技術の開発
予算区分: 実用技術
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:藤田与一、服部誠、佐藤徹、樋口泰浩、土田徹、南雲芳文

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