福井県における狭畦栽培ダイズ「エンレイ」の生産安定条件


[要約]
福井県におけるダイズ品種「エンレイ」の狭畦無培土栽培は、倒伏を避けるため播種期を6月10日以降とし、栽植様式は1株1本立で条間30~40cm・株間15~18cmを目安とする。初期除草の効果が不十分で7月10日頃に20本/u以上の雑草が見られた場合は早めに除草する。

[キーワード]ダイズ、狭畦栽培、エンレイ

[担当]福井農試・栽培部・作物研究グループ
[代表連絡先]電話:0776-54-5100
[区分]関東東海北陸農業・北陸・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
福井県のダイズ「エンレイ」の低収圃場では主茎長が短く、茎葉による条間の被覆も遅い。このようなところで、まず莢数を確保するためには、狭畦栽培とするのが簡単で有効と思われる。しかしこれまでの狭畦栽培の導入事例においては「倒伏」または「雑草害」(排水不良が原因の場合もある)によってコンバイン収穫に難儀した例も少なくない。そのような失敗を避けるため、狭畦栽培の導入適応条件および栽培方法を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 「倒伏」と「雑草害」が回避された狭畦栽培では、平均15%程度の増収が期待できる。百粒重は慣行栽培と同等で、しわ粒率の低減も期待される(表1)。
2. 狭畦栽培で主茎長が70cmを超えるようだと倒伏の危険が高まるため、播種期は6月10日以降にする(図1)。新たに導入の可否を判断する目安としては、従来の慣行栽培で主茎長60cm未満だったところが適応圃場である(狭畦密植の主茎長は慣行より最大10cmほど長い)。
3. 6月10日以降播種の1株1本立で、条間30cmなら株間15〜20cm、条間40cmなら株間13〜18cmが好適な栽植間隔である(図2)。条間50cmでは狭畦の効果が不十分な場合がある。
4. 7月10日までに、生育の進んだ4葉以上の雑草が20本/u以上になるようなら早めに除草する(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 麦作で作った溝はそのまま活用するのが原則だが、雑草埋没などのためにやむを得ず埋め戻す場合は、新たに掘り直すか、ダイズ播種の際ロータリにサイドリッヂャを取り付けて作溝するなどして表面排水を確保する(サイドリッヂャ溝:08年の比較例では8%多収、09年には3現地すべてで実施)。
2. 生育中に除草作業をしなくてすむよう、砕土と排水に一層留意して、初期除草の徹底とダイズ初期生育の促進を図る。
3. 茎葉が重なるために、農薬は莢まで届きにくくなるので、適量を丁寧に散布する。

[具体的データ]
表1 狭畦栽培による増収およびしわ粒低減
図1 播種期、主茎長と倒伏の関係(’07〜’09、場内、現地試験込み) 図2 条間・株間の適応範囲(場内試験の播種期6/11〜21を抜粋、'07・08)
図3 7月10日の雑草数と実害(条間30cm現地 ‘09)
[その他]
研究課題名:根圏環境の改善と生育診断による北陸産大豆の多収栽培技術の開発
予算区分:実用技術
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:笈田豊彦、井上健一、田中豊実、見延敏幸、坪内均、斉藤正志

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