重窒素自然存在比を用いたグライ低地土における根粒窒素固定量の測定法


[要約]
測定のつど、根粒非着生の試料と固定窒素のみで生育した試料を比較に用いることで、グライ低地土で栽培されたダイズ「エンレイ」においても、根粒窒素固定量の期間積算値を重窒素自然存在比により測定できる。

[キーワード]ダイズ、エンレイ、重窒素自然存在比、根粒、窒素固定量測定法

[担当]中央農研・北陸水田輪作研究チーム
[代表連絡先]電話:025-5268-3244
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境、共通基盤・土壌肥料
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
根粒窒素固定量は、相対ウレイド法、差引法、重窒素自然存在比法によって算出される。相対ウレイド法はその時点の根粒活性を明確に表すものの、根粒窒素固定量を積算するには煩雑となり、また差引法では非着生系統ダイズの生育の影響が大きい等の問題がある。一方で重窒素自然存在比(δ値)を用いた方法は積算の根粒窒素固定量として測定できるが、比較試料を用いない場合や、用いても一時期の比較試料の値を全ての時期に用いている場合が一般化している。またグライ低地土においてはδ値を用いての測定は、水田土壌においては値が低くなる上、他の測定法と比較・検討は十分になされていない。そこで、グライ低地土において、重窒素自然存在比法の評価を行うことを目的とする。

[成果の内容・特徴]
1. δ値による根粒窒素固定割合の算出に用いる根粒由来窒素のみで生育した「エンレイ」(比較エンレイ)のδ値は、生育時期、年次により変化する(表1)。そのため、測定のつど比較試料を用いると、「エンレイ」(試料エンレイ)と根粒非着生系統ダイズ「En1282」(試料En1282)のδ値の差が小さい条件でも測定できる(表2)。
2. 根粒窒素固定割合について重窒素自然存在比法と差引法および相対ウレイド法とを比較すると、差引法とはほとんど関係が認められないが、相対ウレイド法とはおおむね同様の傾向を示す(図1)。
3. 重窒素自然存在比法により根粒窒素固定量を求めると、10年以上畑転換をした排水良好な圃場で根粒窒素固定量が有意に高く、また排水不良な圃場に排水改善処理を施すと、同ほ場で未施工の場合(対照区)に比べて、根粒固定窒素量がやや高くなる(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本成果は、ダイズ「エンレイ」の根粒窒素固定の測定方法の参考資料として活用する。
2. 本成果は細粒質グライ低地土において行い、また湿害対策としては耕うん同時畝立て播種栽培を併用した栽培条件の結果である。
3. 根粒非着生系統ダイズ「En1282」は、元生物資源研の赤尾により作出された。

[具体的データ]
表1 比較エンレイの生育時期、年次による重窒素自然存在比の変化
表2 比較試料の使用の違いによる窒素固定割合の算出値
図1 重窒素自然存在比法と差引法、相対ウレイド法との根粒窒素固定割合の比較(2007-2008)
図2 重窒素自然存在比法による根粒窒素固定量の推移の評価(2007-2008)
[その他]
研究課題名:北陸地域における高生産性水田輪作システムの確立
中課題整理番号:211k.4
予算区分:基盤、実用技術
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:大野智史、足立一日出、古畑昌巳

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