緑茶の品質関連情報の提供が購買行動に与える影響


[要約]
嗜好品としての位置づけにある緑茶は、多様化している消費者に対して、味などの品質関連情報を記したラベルを商品のパッケージに表示することで、購買選択確率が高くなり市場競争力を高めることができる。

[キーワード]緑茶、品質関連情報、購買行動、選択実験

[担当]三重農研・経営植物工学研究課
[代表連絡先]電話:0598-42-6356
[区分]関東東海北陸農業・経営
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
緑茶は種類が多く、仕上げ加工においても多様な品質の商品を作り出すことができる。また、緑茶は嗜好品であることから、こうした商品の特徴を消費者に理解してもらうことが、販売促進のためには重要と考えられる。このための工夫の一つとして、味の特徴などの品質に関連する情報をパッケージに表示する方法について、選択実験によりその効果を検証する。

[成果の内容・特徴]
1. 緑茶の品質関連の情報は、旨み度・渋味度・色合いの3項目を簡易な星印で示し、またその特徴が現れる抽出方法を表示したラベルにより提示する。このラベルの添付効果を検証するため、ラベル添付の有無に加えて、産地(伊勢茶・静岡茶)、茶種(かぶせ茶・煎茶)、価格(500円から1,800円までの4種類)のそれぞれの属性・水準を組み合わせた商品を想定し(表1)、図1に示すような形式で回答者に質問を行う。
2. 各属性の水準間の相対評価は、産地では伊勢茶より静岡茶が好まれ、価格は高くなるほど効用が下がり、また特性ラベルはないものよりあるものが好まれる。しかし、茶の種類の好みはかぶせ茶と煎茶に差があるとはいえない(図2)。
3. 相対評価結果を用いて特性ラベル以外の属性を一定にし、ラベルの有無の選択確率を比較する。価格が1,000円の特性ラベルなしの商品と、同額の特性ラベルありの商品では、ラベルなしに対してラベルありの選択確率は高く、品質関連の情報を表示する効果が確認できる(表2)。
4. 特性ラベルありの商品が、特性ラベルなしの1,000円の商品と選択確率が等しくなる価格は1,256円である。これは、品質関連の情報を提示することで、約25%高い価格設定にしても、情報のないものと同程度の市場競争力が保たれることを示す(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. .本成果は中京圏の消費者を対象にした調査に基づくものであるが、一般的な緑茶マーケティングにおける販売促進方法の一つとして活用できる。
2. ラベルにより提示した情報は消費者に認識され、理解されることを前提にしている。この点に関して、調査票において説明や注意喚起などを行ったアンケート調査による結果であることから、実際の店舗での買い物行動より提供情報の理解程度は高かったと考えられ、結果は過大評価の可能性がある。
3. 本成果では、ラベルに示す項目や内容についての検証まではできていない。また、表示内容は信頼のおける機関の統一的な基準に基づくことが望ましい。

[具体的データ]
表1 全ての質問の選択肢の組合せ 図2 各水準に対する相対評価(係数推定値)
表2 特性ラベルの有無による購買選択

(糀谷 斉)

[その他]
研究課題名:伊勢茶リフレッシュ支援技術開発事業
予算区分:県単
研究期間:2008〜2010年度
研究担当者:糀谷 斉、山端直人

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