挽き割り処理した飼料用籾米は泌乳前期の乳牛用飼料中に25%混合できる


[要約]
分娩から分娩後10週間目までの乳牛に対して、稲WCSを粗飼料の主体とし、トウモロコシと大麦を挽き割り処理した飼料用籾米に代替し、25%混合して調製した発酵TMRを給与しても、乳生産、ルーメン内容液性状および血液性状に影響を及ぼさない。

[キーワード]飼料用籾米、挽き割り処理、稲WCS、泌乳前期、乳生産

[担当]三重畜研・大家畜研究課
[代表連絡先]電話:0598-42-2029
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
飼料自給率向上が喫緊の課題となっている現状で、水田を活用して生産できる飼料用稲や飼料用米の利活用が注目されている。そこで、周産期乳牛に対して稲ホールクロップサイレージ(WCS)を粗飼料の主体とし、トウモロコシや大麦の輸入穀類の代替として飼料用籾米を用いた発酵混合飼料(TMR)の有用性を実証する。

[成果の内容・特徴]
1. 乾物比でチモシー乾草を25%と圧ぺんトウモロコシと圧ぺん大麦を合計25%混合したTMR(輸入飼料TMR)を対照とし、チモシー乾草を稲WCS(品種:ホシアオバ)に、圧ぺんトウモロコシと圧ぺん大麦を挽き割り処理した飼料用籾米(品種:モミロマン)に代替したTMR(自給飼料TMR)を供試し、乳牛8頭(経産牛)を4頭ずつ2群に配置した一元配置法により、分娩予定の2週間前から分娩後10週間目までの飼養試験を実施している。挽き割り処理は飼料米破砕機の原型機を用いて行い、TMRは細断型ロールベーラを用いて発酵TMRに調製している。飼料構成は表1に示す。
2. 自給飼料TMR区の乾物摂取量および乾物摂取量/体重比は、分娩後の各週次において輸入飼料TMR区と差はないことから、自給飼料TMRは、泌乳前期において輸入飼料TMRと同等の採食性が得られる(図1)。
3. 自給飼料TMR給与による乳量、乳脂肪率および乳タンパク質率は、分娩後の各週次において輸入飼料TMR給与と差がなく推移する(図2)。
4. 分娩後10週間の飼養成績は、TMR区間に差はなく、自給飼料TMR給与によるエネルギー不足は認められない。また、ルーメン内容液性状や血液性状にも大きな影響を与えない(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 稲WCSと飼料用米を多用し、飼料自給率を高めた発酵TMRの給与指標となる。
2. 全飼料中25%の飼料用籾米をトウモロコシと大麦の代替として利用した条件での成果である。
3. 籾米の使用については「飼料として使用する籾米への農薬の使用について」(平成21年4月20日付け農林水産省消費・安全局、生産局四課長通知)(平成22年9月7日一部改正)および「飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行について」(平成22年11月30日付け農林水産省消費・安全局長通知)に留意する必要がある。

[具体的データ]

表1 TMRの飼料構成と成分組成

図2 乳量および乳成分率の推移

図1 乾物摂取量および乾物摂取量/体重比の推移

表2 分娩後10週間の飼養成績

(山本泰也)

[その他]
研究課題名:稲・麦WCS、飼料用米等を活用した発酵TMRによる牛乳の生産技術開発
予算区分:委託プロ(国産飼料プロ3系)
研究期間:2010〜2014年度
研究担当者:山本泰也、平岡啓司、川村淳也、関 誠(新潟農総研)

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