育成期の黒毛和種去勢牛に対する稲発酵粗飼料給与技術


[要約]
育成期の黒毛和種去勢牛に対する稲発酵粗飼料給与は、チモシー乾草を給与した慣行区と比較して同等の摂取量及び発育が期待できる。また、稲発酵粗飼料は濃厚飼料と混合給与することにより、摂取量及び増体量が高まる傾向にある。

[キーワード]稲発酵粗飼料、黒毛和種去勢牛、育成期、乾物摂取量、増体

[担当]富山畜研・酪農肉牛課
[代表連絡先]電話:076-469-5921
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
飼料自給率の向上や水田の利活用向上を図るため、稲発酵粗飼料(イネWCS)の生産拡大が進められており、肥育牛経営においても今後益々その利用拡大が期待されている。肥育牛に対する給与については、これまでに肥育期間(8〜24ヵ月齢)全体を通して給与できることを報告しているが、育成期における給与効果は明らかにされていない。
  そこで、育成期の黒毛和種去勢牛に対して、農家で一般的な飼い方である群飼条件のもとでイネWCSを給与し、乾物摂取量や増体等に及ぼす効果を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 供試牛は育成期(6〜9ヵ月齢)の黒毛和種去勢牛12頭を用い、4頭1群の群飼条件下で、3×3ラテン方格法により、表1に示した飼料を用い、イネWCSと濃厚飼料を混合給与する(WCS混合区)、イネWCSと濃厚飼料を分離給与する(WCS分離区)、チモシー乾草と濃厚飼料を分離給与する(慣行区)の3試験区の比較を行った。なお、給与量は日本飼養標準・肉用牛(2008年版)に準拠して設定した。
2. 乾物摂取量は区間で差は認められないが、粗飼料の摂取割合はWCS混合区でやや高い傾向がある(表2)。
3. WCS混合区はWCS分離区に比較して1日当たりの増体量がやや大きいとともに、他区と比較して個体間のバラつきが小さく、飼料要求率も改善される傾向にある(図1)。
4. 育成期における粗飼料採食性の目安とされる腹胸差については、各区とも子牛市場出荷時の目標とされる20〜30cmを確保しているが、区間に差は認められない(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 育成期の肥育牛に対するイネWCS給与は、慣行区と比較し乾物摂取量・発育ともに遜色はなく、購入牧乾草の代替粗飼料として充分利用できる。
2. 従前の肥育期以降の情報(2004年度成果情報)等を勘案すると、イネWCSは、肥育牛向け粗飼料として育成期から出荷まで全期間にわたり給与することが可能である。
3. 育成期にイネWCS給与を行う際には、イネWCSを細断して濃厚飼料と混合給与することがより効果的である。

[具体的データ]

(富山畜研)

[その他]
研究課題名:育成期の黒毛和種去勢牛への稲発酵粗飼料給与技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2008〜2010年度
研究担当者:松原久美子、高平寧子、吉野英治、松原禎敏、廣瀬富雄

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